海上自衛隊の“スマホ解禁”で「船を下りるか私と別れるか」問題は解決? 現役隊員が語る“海の上の恋愛事情”
スマホが使えない生活なんてムリ――そんなZ世代のニーズをふまえ、海上自衛隊が艦艇内でのネット環境の改善に乗り出した。これまで遠洋航海中に許されていたネット通信は、1日1往復のメールだけ。不自由な環境の中、特に恋人を“陸”に残してきた隊員などは、さぞツラい思いをしてきたことだろう。艦艇内での「スマホ解禁」に合わせて、現役隊員に“海の上での恋愛事情”について聞いた。 【写真】迫力満点!航海中の訓練の様子はこちら * * * 海上自衛隊は、5月に世界一周の遠洋航海訓練に出発した練習艦「かしま」「しまかぜ」に、米スペースX社の衛星通信サービス「Starlink(スターリンク)」を試験導入した。 これまで、隊員たちが私用で使える艦内のネット通信は速度やデータ容量が著しく制限されており、家族や友人との連絡手段はメールのみ。しかもメールボックスが1日2回しか更新されないため、1往復のやりとりしかできなかった。 だが自衛官の定員割れが続く中、若い世代の志願者増につなげようと、海自はネット環境の整備に本腰を入れることを決めた。海上幕僚監部広報室によると、スターリンク導入によって休憩時間にはSNS利用や動画視聴も可能になり、今後は3年ほどかけて約9割の艦艇に導入する予定だという。 長期の海上勤務につく自衛官の中には、日本に恋人を残してきた若い世代も多くいる。1日1往復のメールしかできないという不自由極まりない環境で、隊員たちは遠距離恋愛をどう乗り越えてきたのか。
同広報室の胡(えびす)真二・3等海佐(39)は、約10年前に半年間の遠洋航海に出た時のことを、こう振り返る。 「私用のスマホは電波が入らないので、事前に家族や恋人のアドレスを申請して、船に用意された専用の通信端末からメールを打つんです。当時の彼女には、業務の合間を縫って、なるべく毎日メールしていましたね」 胡さんたちの任務は、ソマリア沖・アデン湾を通る商船を身代金目的の海賊から護衛することで、緊迫の毎日だった。海賊が乗る武装漁船に追われている船から「助けてくれ!」とSOSの無線が飛び込んでくることもあり、日に日に疲労が蓄積していったという。 ■「船乗りは港ごとに女がいる」はホント? そんなとき、恋人に仕事の大変さを聞いてもらえれば救われることもあるだろう。だが、彼女に弱音を吐きたくなっても、自衛官という職業柄、業務内容を第三者に漏らすことは厳禁だ。過去には、自分が乗っている艦艇の位置情報をSNSにアップして、処罰された隊員もいる。 「自分の状況を詳しく伝えられないので、愚痴りたくても愚痴ることができない。ストレス発散という意味では、寄港先で同僚と飲みに行くことを楽しみにしていました」 かつては「船乗りは港ごとに女がいる」などの俗説も聞かれたものだが、「だいぶフィクションです(笑)。遊ぶ人は遊ぶんでしょうけど、一部でしょうね」と一蹴。胡さんは夜遊びの代わりに、寄港するとプリペイドカードを買って恋人に電話をかけていたという。約15年前の遠洋航海の際は、通話料が10分あたり1000円以上する国でも、携帯電話の電池がなくなるまで話し込み、結果10万円近い請求が来たこともあったとか。