ドイツ総選挙「トランプ復活」の風圧で再度前倒し、2月実施へ 保守野党が優勢
【パリ=三井美奈】ドイツでショルツ連立政権の崩壊を受け、前倒し総選挙が来年2月23日に行われる見通しとなった。12日、大統領府が発表した。来年1月のトランプ次期米政権の発足を視野に、総選挙で政権出直しを急ぐよう圧力が強まった。世論調査では中道右派野党、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)が首位に立ち、政権交代の公算が大きい。 連立政権は今月6日に予算案をめぐる対立で崩壊した。ショルツ首相は当初、来年3月に前倒し総選挙を行う日程を描いた。だが、CDUのメルツ党首は「国際的な政治状況や悪化する経済状況を考えれば、早く新政権を樹立すべきだ」として、早期実施を要求した。 大統領報道官の発表によると、ショルツ氏の中道左派、社会民主党(SPD)やCDUなどの与野党代表が12月16日、連邦議会で首相の信任投票を行うことで合意した。不信任となった場合、大統領は速やかに連邦議会を解散する構えで、総選挙の2月23日実施が「現実的」だとした。ショルツ政権は連立崩壊で少数内閣となっており、不信任の成立は確実だ。 ドイツではトランプ政権が発足すれば、安全保障や経済で逆風にさらされるとの見方が広がる。連立崩壊による政局混迷は長期化させるべきではないとの声が強く、世論調査では65%が「できるだけ早期に総選挙を実施すべきだ」と答えた。 バイデン米大統領はドイツを「わが国と最も緊密で重要な同盟国」と呼び、ロシアのウクライナ侵略後、欧州安全保障でドイツの役割を重視した。これに対し、トランプ氏については2017年の最初の就任後、「ドイツは防衛費をケチる」とやり玉にあげ、ドイツ駐留米軍の一方的削減を打ち出すなど、米独関係が冷え込んだ記憶が残る。 通商でもトランプ氏が国内産業保護策として、公約通り関税を引き上げれば、貿易大国ドイツには打撃が避けられなくなる。低迷する経済が、さらに冷え込むことになりかねない。 ショルツ政権は21年、SPD、緑の党、経済界に近い自由民主党(FDP)の3党連立で発足した。任期満了に伴う総選挙は来年9月に計画されていた。先週の支持率調査ではCDU・CSUが34%で首位に立ち、移民排斥を掲げる右派「ドイツのための選択肢(AfD)」が18%、SPDが16%と続いた。
ドイツで国会解散の権限は首相ではなく、大統領にある。