なぜ、同じ漢方薬を飲んでも「効く人」「効かない人」がいるのか…最新研究で見えてきた、驚きの「理由」
私たちにとって身近なツボや鍼灸、漢方薬。近年、そのメカニズムの詳細が西洋医学的な研究でも明らかになってきています。例えば「手のツボが便秘改善に効くとされるのはなぜ」「ツボに特徴的な神経構造が発見された?」「漢方薬が腸内細菌のエサになっている?」など、興味深い研究が数多く報告されているのです。最新の研究では一体どんなことが明らかになっているのでしょうか。 【写真】じつは、漢方薬は「日本固有」の伝統医学…意外と知らない漢方薬のルーツ 東洋医学のメカニズム研究の最前線をとりあげた一冊、『東洋医学はなぜ効くのか』(講談社ブルーバックス)から注目のトピックをご紹介していきます。今回は、肝機能を改善する茵ちん蒿湯(いんちんこうとう)という漢方薬に注目。さらに、その効果のカギを握る「腸内細菌」との興味深い関係に迫ります。 *本記事は、『東洋医学はなぜ効くのか』(ブルーバックス)を再構成・再編集したものです。 *漢方薬を服用する場合には、医師・薬剤師に相談し、決められた用法・用量を守ってください。
「茵ちん蒿湯」はどんな漢方薬?
茵ちん蒿湯には、抗炎症作用があるインチンコウとサンシシ、胃腸のはたらきを改善するダイオウの3種類の生薬が含まれます。 茵ちん蒿湯は、黄疸や皮膚炎、蕁麻疹などの改善に使われる漢方薬です。大建中湯などと同じく、外科でよく使われており、臨床試験でも、閉塞性黄疸の手術に併用することで、肝機能の回復に効果があることが報告されています。 筆者(山本)が番組で取材した茵ちん蒿湯の研究を行っている横山幸浩医師は、名古屋大学医学部附属病院で、主に肝臓や膵臓、胆嚢のがん手術を担当しています。横山医師によれば、茵ちん蒿湯は、特に胆管がんで起こる黄疸の改善に使われており、手術の前に黄疸を改善、つまり肝機能を回復させるために欠かせないものとなっています。 動物を使った研究でわかっている肝機能の改善メカニズムとしては、炎症反応を調節する役割があるIL‐10というサイトカインを増加させ、肝臓の細胞で起こっている炎症を鎮めたり、細胞の自然死(アポトーシス)に関わるTGF‐βというサイトカインに作用して肝臓の細胞を延命させたりする作用などが確認されています。