「家庭料理の話をしないで」という高校生…土井善晴が“一汁一菜”で本当に伝えたい「自愛」のための料理
旬の野菜を食べるのは「家族や自分に季節を知らせること」
――自分のために料理すれば、自分を思いやれる、ということでしょうか。 そう。食べるよりも料理することの方が大事。自炊すれば、自分を大切にすることができます。 一人暮らしをする子どもに親が電話して「ちゃんと食べてるか?」って聞くでしょ。「味噌汁くらいだけど作って食べてるよ」と聞けばうちの子しっかりしてるなって思う。逆に、親が相変わらず手まめに料理していたら子どもは何より安心できるものです。 ――はじめは、なにを作ればいいでしょう? だから、一汁一菜です。お椀にいっぱいの具を小鍋に入れて、お椀にいっぱいの水を入れる、火にかけて煮立ったら味噌をといて、しばらく馴染ませれば具沢山の味噌汁です。家に帰って5分もすれば温かいものが食べられます。 おかずがなければ白いごはんに味噌をのせて食べてください。味噌やご飯のおいしさを知るでしょう。日本には、ご飯のおかずはいくらでもあります。のり、たらこ、佃煮、梅干し、豆腐、油げ、さつま揚げ、大根おろしをおろして醤油を垂らせばいいのです。 ――最後に、今の季節に食べておきたい旬のものを教えてください。 春は芽のものです。さやえんどうとか、菜の花、アスパラガス、山菜などが旬です。献立を考えるとき、メインディシュから考えるでしょ? メインディッシュって魚か肉のことなんです。メインディッシュから考えるから、悩むのです。野菜を中心に考えていいんですよ。和食にそもそもメインディッシュなんてありません。 ――野菜も主菜になり得るんですね。 たとえば菜の花をポキポキ折って、硬いとこは捨てて、フライパンに少しの水と一緒に入れて、蓋をして蒸し焼きにする。オリーブオイルをかけて、ハムを添えてもいい。それを「春がきたよ」って出せば、それが一番。野菜だってメインディッシュになるんです。たけのこをゆでて、マヨネーズと味噌を混ぜたのをつけて食べてみようかな、とか。そういうものが主役になってもいい。それで家族に季節を知らせることになるでしょう。家庭に季節を運んでください。 土井善晴(どい・よしはる) 1957年生まれ、大阪出身。大学卒業後、スイスとフランスで料理を学び、大阪で日本料理を修業。92年に「おいしいもの研究所」を設立。NHK「きょうの料理」やテレビ朝日「おかずのクッキング」などの講師を務める。著書に『一汁一菜でよいという提案』(新潮社)、『くらしのための料理学』(NHK出版)など。 TBSドキュメンタリー映画祭2024 全国6都市で3月15日(金)より順次開催(東京・大阪・京都・名古屋・福岡・札幌) ※土井善晴さん、舞台挨拶への登壇も決定! 映画 情熱大陸 土井善晴(東京・大阪・京都限定上映) 「一汁一菜」、ご飯を中心に味噌汁と簡単なおかずで構成する和食のスタイル。土井は、日々の食事はこれで十分と提案し、料理を億劫に感じていた人の心を軽くする。味噌汁は出汁をとらなくてもいいし、具材に何を入れてもいい。作りやすいレシピの紹介で人気の“土井先生”だが、いま、レシピから離れる大切さを説く。料理する全ての人を応援したい…生き辛さを抱える時代に新たな暮らしの哲学を模索する料理研究家の情熱を見つめる。 予告編: 出演:土井善晴 監督:沖 倫太朗
吉川愛歩