元銀行マンが考える「銀行に預けていれば安全」という常識を裏切る“前代未聞の不祥事”が起きたワケ
三菱UFJ銀行の都内2店舗で、銀行の顧客が貸金庫に預けていた約60人分の金品約十数億円が盗まれていたという、前代未聞の不祥事が発生しました。 【画像】元行員による不祥事の概要 事件は顧客からの申し出により発覚したのですが、盗んだのは事もあろうか貸金庫を担当する管理者であったというのは、さらなる驚きでもありました。 本人は事実を認め、同行は現在警察に対処を相談中とのことです。「銀行に預けていれば安全」という常識を裏切る形となったこの事件、原因究明とその対応策の在り方に注目が寄せられています。
◆2つの盲点を突いた犯罪
銀行の貸金庫は、新設店舗などでは契約者のカード操作による強固なセキュリティーの全自動方式も導入されてはいるものの、大半の店舗では依然として顧客が保管している鍵と銀行の鍵それぞれで、貸金庫の2つの鍵を同時に開けて利用するという、アナログ手続きが必要なタイプが主流ではあります。 この方式では顧客の鍵の予備鍵が、万が一の紛失対応を想定して、銀行に保管されているのです。この予備鍵は、顧客、管理者の両者の封印によって密封され、厳重に保管されており、その管理状況も定期検査などでチェックされてはいます。 しかし今回、細かい手口は分かりませんが、その防犯管理はもろくも破られてしまっているのです。 銀行は多額の現金を扱うビジネスであり、古くからその犯罪防止に向けた管理は二重三重のガードがかけられ、基本的にどの業務も管理者を含めた複数人が共犯でもしない限り、犯罪が起きるリスクは非常に低いのです。 さらにシステム化が進んだ現在において、防犯セキュリティーは一層強固になったといえ、預金、貸出、為替の三大業務において現金をだまし取るような類の不正はほとんど起こせない、といっていいでしょう。 しかし今回不正が起きたのは、銀行の主要業務ではない貸金庫業務でした。しかも前述したように、IT化、デジタル化が当たり前のこの時代においても、大半の店舗ではいまだ貸金庫業務がアナログであったという点に、犯罪の付け入るスキがあったといえそうです。