沖縄県石垣島に海自護衛艦「いずも」来島で高まる緊張
沖縄県の八重山列島に属する石垣島と西表島の間には、国立公園にも指定された国内最大規模(東西約30キロ、南北約20キロ)のサンゴ礁が広がる石西礁湖があり、ハマサンゴやミドリイシなど約360種ものサンゴが群生する。 ここに海外からのクルーズ船も訪れていた8月31日、突如、異様な巨艦が現れた。海上自衛隊で最大の護衛艦「いずも」(基準排水量1万9950トン)だ。オーストラリアやイタリア、ドイツ、フランスの海軍が参加して8月27~29日の間、関東南方から沖縄東方の海空域で行なわれた共同訓練(ノーブル・レイブン24―3)に参加した後、補給や乗員の休養を目的に石垣島へ来島した。
4月に平時から有事に備え自衛隊が利用できる特定利用港湾に指定された石垣港だが、「いずも」はその巨体(全長248メートル、全幅38メートル)からか市街地から離れた港外に停泊した。 「いずも」は2015年にヘリコプター搭載護衛艦として就航したが、20年度からF35B戦闘機が発着するための事実上の空母化へ改修工事を始めており、21年には実際に米海兵隊のF35Bが発着艦試験を行なった。今年度は423億円、来年度にも18億円の改修予算が計上されている。 自衛隊の公式サイトには「わが国が憲法上保持できる自衛力は、自衛のための必要最小限度のもの(中略)個々の兵器のうちでも、性能上専ら相手国国土の壊滅的な破壊のためにのみ用いられる、いわゆる攻撃的兵器を保有することは、直ちに自衛のための必要最小限度の範囲を超えることとなるため、いかなる場合にも許されません。たとえば、大陸間弾道ミサイル、長距離戦略爆撃機、攻撃型空母の保有は許されないと考えています」と明記されている。政府は「いずも」を「多機能で多目的な護衛艦」と詭弁を弄するが、ステルス性を持ち、6・8トンものミサイルや爆弾を搭載可能な戦闘機を発進できる攻撃型空母そのものだ。 最近、中国の領海侵犯が続くが、“自由で開かれたインド太平洋”実現に向け行なわれた多国籍軍の共同訓練による対中国包囲網もその要因の一つではないか。この先、軍拡競争がどこまでエスカレートするのか、東京まで1950キロ、台湾まではわずか270キロの国境の島の住民は憂慮している。
吉田敬三・写真家