近年の猛暑に悩む米どころ コシヒカリやめるか、時季をずらすか・・・暑さに強い品種も
近年の猛暑を受け、米どころの広島県世羅町で暑さに強い品種「にじのきらめき」を栽培する動きが広がっている。暑さで稲が伸びすぎて倒れ、作業性が悪くなるのを防ぐのが目的。同町は県内でも比較的涼しい地域だが、昨年に東北地方で高温障害が起き、コメが品薄となったことも新品種への転換を後押しする。 【写真】暑さに強い「にじのきらめき」 にじのきらめきは2018年に新品種として登録出願され、高温耐性のほか、稲の丈が低く倒れにくいのが特長。収穫量もコシヒカリより15%程度多いという。町内の約26ヘクタールで水稲を生産する農事組合法人アグリテックあかやは昨年、試験的に栽培を始めた。今年は7倍以上の7ヘクタールに広げ、今週中には稲刈りを始めるという。 町によると、22年に町内で初めて作付けされ、昨年の面積は約16倍の51ヘクタールに拡大。町内で昨年作られた十数品種のうち、わずか2年で4番目の広さとなった。 現在、町内のコメの作付面積はコシヒカリが最大の4割強を占める。食味が良い一方、暑いと丈が伸びすぎて倒れやすい性質がある。町内では今年、稲が倒れた田が目立っており、同法人の国正健治代表理事(75)は「昨年は倒れなかった所でも倒れている。8月の台風10号の風雨に加え、暑さの影響もあると思う」とみる。稲が倒れると刈り取りが困難で、雨が降ると穂から発芽することもある。 夜温がしっかり下がる同町では昨年、今夏のコメ不足の原因となった高温障害はほとんど出なかったという。それでも「脱コシヒカリ」を探る動きは、将来的な温暖化を考慮した備えにもなる。同町農業委員会の内海武博会長(74)は「暑い時季をずらして植えるか、コシヒカリをやめるか。高齢化が進む中で作業面の問題は大きく、考えないといけない時が来ている」と話す。
中国新聞社