【解説】生成AIの広がりで電力消費が爆増…エネルギー基本計画どう見直す?
「ChatGPT」をはじめとする生成AIの登場で、エネルギー事情が一変した。IEA(=国際エネルギー機関)の試算によれば、「AI」「暗号資産」そして、この双方に必要な「データセンター」によって、世界で消費される電力の量は増大し、2026年には2022年比で、およそ2倍に膨れ上がるという。具体的には160億kWh~510億kWh分、増えるという試算で、これは「少なくともスウェーデン1か国分、多ければドイツ1か国分の年間電力消費量」に匹敵するという。地球上で温暖化が原因とみられる異常気象による災害が頻発し、多くの国が「脱炭素」に向けて取り組みを強化する中で、逆に電力使用量増加をもたらす「生成AI」の存在は、日本のエネルギー事情に、どう影響するのだろうか?(日本テレビ解説委員・安藤佐和子) 【画像】その顔がディープフェイク?取材中にだまされる
■アマゾン、マイクロソフト、オラクル…外資が日本に巨額投資
データセンター投資が活況だ。日本企業からは、そこまで大きな話は聞かないが、海外勢からは日本国内のデータセンター投資について、桁違いの発表が続いている。 ・1月 アマゾンウェブサービス(=AWS)5年間で2.26兆円 ・4月 マイクロソフト 2年間で4400億円 ・4月 オラクル10年間で1.2兆円 超巨額投資を決めた外資系IT企業の経営陣の一人は、背景をこう説明した。「(AIの普及で)GPU(=膨大な計算を高速で行う画像処理装置)が出てくるとか、世界がどんどんそっちの方向に向かっている。データセンターの需要が、ものすごく多くなる。アメリカのいわゆるGAFAM系の企業は、もともと利益率が良いから、日本企業と違って大型投資が財務上の心配もなく、できる。海外からの対日投資が増えるのは、日本にとっても良いことでしょう」 データセンター需要の大幅拡大が見込めることに加えて、円安で日本への投資が割安になっている今、日本への大型投資が相次いでいるという。
■恐るべしAI等の電力使用 ドイツ1か国分も…
データセンター需要が拡大しているのは、日本だけではない。IEA(=世界エネルギー機関)の試算によると、2026年の世界の「データセンター・AI・暗号資産による電力消費量」は、2022年に比べて、最大でドイツ1か国分の年間電力消費量と同じ分、増えるという。 AIは大量の“計算”を超高速で行うなど、膨大な電力を消費するのだ。しかし、AIを金食い虫ならぬ、電力食い虫として問題視できるほど単純ではない。うまくAIを活用すれば、逆に電力の効率的な利用にも役立ち、電力消費を削減できる可能性もあるからだ。また、日本の事情からいけば、この人口減少、働き手不足が経済に打撃を与える中で、AIの活用は経済・社会を回すためにも必須となる。