「ヤバすぎる”がん”」の予兆…健診結果の謎項目「T-BIL」を軽く見てはいけない怖い理由
毎年1回は受けることが義務付けられている職場健診。健診結果の異常を示す「*」がついた数値には、実は気にしなくて良いものもあれば、今すぐに再検査を受けなければならないものもある。果たしてあなたは診断結果の本当の意味を理解しているだろうか。 【漫画】くも膜下出血で倒れた夫を介護しながら高齢義母と同居する50代女性のリアル BMI・血圧・尿糖・眼底など項目別にその検査結果の正しい見方を解説した『健診結果の読み方』(永田宏著)より一部抜粋してお届けする。 『健診結果の読み方』連載第26回 『「ガンマGTP」が高いのは酒飲みの勲章⁉…じつはそれ、「命にかかわる病気」の前兆かもしれません』より続く
健診における「謎項目」
健診結果の中に、総ビリルビン(T-BIL)を入れている会社は少なくありません。しかしどんな数値か知っている人はわずかで、健診における「謎項目」のひとつになっています。 これは肝臓や胆道の病気のスクリーニング検査です。 ビリルビンは、赤血球のヘモグロビン(酸素運搬を行うタンパク質)の老廃物です。赤血球は約4ヵ月で寿命が尽き、脾臓で破壊されます。その際、ヘモグロビン分子も分解されてビリルビンになり、血液中に放出されるのです。 その後、さらに肝臓で処理されて、胆汁の一成分として十二指腸に放出され、最後は、大便と一緒に排泄されます。また一部は腎臓から尿に排出されます。
茶色い尿は危険サイン
ビリルビンは黄色い色素物質です。大便の色が黄褐色ないし茶褐色なのは、ビリルビンが含まれているからです。またオシッコが黄色いのも、ビリルビンによるものです。 しかし肝臓に障害があると、ビリルビンの排出量が増えるため、オシッコの色が茶色っぽくなります。オシッコの色が変わったら、肝臓からの警告なのかもしれません。 健診で測定するのは、血液中のビリルビン濃度で、基準値は0.4~1.5mg/dLです。「総」という字が付いていますが、ビリルビンには「直接」と「間接」の2種類があって、その合計という意味です。ただその違いは、あまり気にする必要はありません。 基準値を超えている場合は、次の3つのことが考えられます。 (1)肝臓が悪い (2)胆道が悪い (3)先天的な体質 この検査では、肝臓や胆道のどんな病気かまでは特定できません。また体質的に総ビリルビン濃度が高いひともいます。体質だとしたら、健康上の問題はないので、気にすることはありません。 もし肝臓が悪いのなら、AST、ALTやγ-GTPの数値も悪くなっているはずですから、そちらが正常で、総ビリルビンだけが高かったら、体質の可能性が大です。 問題は胆道です。胆石や胆管がん、膵臓がんなどで胆道が詰まると、胆汁が排泄されにくくなるため、血中ビリルビン濃度が上昇してくるのです。 血中濃度がある程度高くなると(だいたい3.0以上)、黄疸が出てきます。皮膚などが黄色くなるのですが、日本人は黄色人種なので、初期の黄疸は分かりにくいといわれています。しかし白眼も黄色くなってくるので、自分で鏡を見て、チェックできます。 総ビリルビンが基準値を超えている人は、腹部超音波検査を受けてみるといいでしょう。肝臓、胆のう、胆道、膵臓などの様子が分かります。それで悪いものが見つからなければ、体質かもしれないということで、ひと安心できます。 『「1988年以前に集団予防接種」を受けた人は要注意! ...職場健診に追加すべき検査項目』へ続く
永田 宏(長浜バイオ大学バイオデータサイエンス学科教授)