マーシン×Ichika Nito対談 革新的ギタリストの演奏論、超絶テクは「伝えるためのツール」
クラシックとメタル、二人のギター練習術
─お二人がお互いのことをすごく好きで尊敬し合っていることはすごく伝わってきました。一方で、お二人が影響を受けてきたギタリストについて改めて伺いたいです。 マーシン:(日本語で)とても難しいですね……超難しい! Ichikaから話して。 Ichika:ラッセル・マローンがすごい好きなんです。僕と同じようにギター1本で弾いていて、流れるようにクリーン。レジェンドのギタリストなんですけど、彼からはとても影響を受けています。 マーシン:精神面で一番大きな影響を受けたのは、パコ・デ・ルシアだね。彼はフラメンコを広めるのに一役買ったアーティストなんだ。フラメンコはスペインの伝統として知られているけど、以前はそこまで有名じゃなくて、もっとローカルのものだった。彼はそれをどう見せるか、クリアなビジョンを持っていたんだ。日本でフラメンコはすごく人気だよね? こんな遠くまで彼のビジョンが届いていることはすごく興味深い。それと、彼のテクニックはありえないよ! ─この記事を読む人の中には、ギターをやってる人も多いと思うんですが、どうやったらお二人のように弾けるようになるかは、みんな知りたいことだと思います。お二人はどういう練習をしていますか? Ichika:マーシン、練習のルーティーンってある? マーシン:特にないかな。そうだな...... 最近は、手よりも頭の中で練習しようとしてる。これはツアーの時によくやっていて。例えば、ショパンの曲を演奏する時、今では完璧にクリーンに演奏できているかどうかはあまり気にしていない。それはもうできるって分かってるから。それよりも、頭で次のコードを映像化するんだ。一つの音符を弾いている時、次の音符がどんどん見えてくるように。この意味では、手が脳を動かしてるんじゃなく、脳が手を動かしている。ルーティーンに関しては、今は特にないね。 そうだな、僕はクラシックのテクニックの練習を強くオススメする。クラシックギターはテクニックのコアだと思うんだ。手のポジションとか、良い癖を習得できる。10歳から18歳まで、僕は熱心にクラシックを勉強してた。Ichikaはメトロノームを使って練習してる? Ichika:うん。 マーシン:だよね。僕にとってもすごく大事。 Ichika:テンポは? ローからハイもする? マーシン:うん。スローだけ練習するっていう人もいるけど、それは不十分だ。僕がティーンエイジャーの時のフラメンコの先生は「バスルームにもメトロノームを持っていけ」って言ったよ。ずっと持ち歩けってね(笑)。 ─Ichikaさんはどういう練習をしていますか。 Ichika:僕はメタルミュージックを練習することをオススメしますね。メカニカルですごくタイトだから。 マーシン:クラシックとメタル! Ichika:僕はアイアン・メイデンから入りました。ギターを初めて弾いた時もメイデンで、2年くらいはそればかり弾いていたんです。ギター人生の初めの頃からの3年間は、メタルしか弾いてなかったほどです。ここで基礎的な技術や、かっちりした弾き方が身について、そこからリズムで遊んだり、いろんな発展につながったんだと思う。このメタル期間がなかったら今のようなことはできなかったと思いますね。 ─今でもプログレッシブ・メタルコアやジェント(Djent)がお好きだというお話もされていますしね。 Ichika:そうですね、ずっと聴いていますね。 ─たとえば、エラ(Erra:プログレッシブ・メタルコアの人気バンド)とアイアン・メイデンは結構離れてると思うんですけど、その飛躍の間に何があったのか、興味深いです。 Ichika:始めはアイアン・メイデン、ヴァン・ヘイレン、デイヴィッド・リー・ロス(ソロ作にはスティーヴ・ヴァイをはじめとした超絶プレイヤーが多数参加)、ガンズ・アンド・ローゼズとかを聴いていて、その流れで音楽的にもうちょっと難しいの聴きたいなと思い始めたんです。テクニカルな音楽が聴きたくなって、ヴェイル・オブ・マヤっていうデスコアの方にいったり。その頃、ペリフェリーが台頭してきて、ペリフェリーを聴き始めた。ペリフェリーからジェントが派生したのもどんどん聴いていって。 それで、当時はゴット・ジェントっていうサイト(got-djent.com、2018年頃に更新停止)があって……。ゴット・ジェントがあった頃は本当にもう天国で。毎日のようにニューリリースを見ていました。どマイナーなところまで。 ─懐かしい時代です。 Ichika:あれがなくなって本当に悲しいんですよ。各ジャンルごとにああいうサイトがほしい。 マーシン:デスコアIchika! 一同:(笑)。