マーシン×Ichika Nito対談 革新的ギタリストの演奏論、超絶テクは「伝えるためのツール」
ギタープレイを動画でどう映えさせるか
─動画の作り方のお話が出ましたが、プレイスタイルなども含め、YouTubeやInstagramでの見せ方で意識されていることはありますか。 Ichika:まず、マーシンの意見を聞きたいな。 マーシン:忘れられがちだけど、一番大事なのはオリジナリティ。誰かを真似するのは簡単で、Ichikaみたいなタイトルやサウンドは簡単にコピーできる。でも、バッドクオリティのIchikaができあがるだけだよね(笑)。大事なのは、自分のアイディアに自信を持つこと。それが一番。 僕にとって、リズムは身体の一部になっている。右手の爪を見ても分かるように、フラメンコのフィンガーピッキングスタイルは僕に染みついているんだ。こういうスタイルのギタリストはそれほど多くない。TikTokやInstagramの動画を撮る時には、僕のスタイルを強調したいと思ってる。メインストリームのオーディエンスは、クレイジーなリズムや右手のテクニックが気になっていると思うんだ。だから、僕はテクニックとサウンドを動画のフォーマットでどう見せるか考えている。アルバムとなると、考えるポイントはまた違うんだけどね。ソーシャルメディアのアイディアはすべてワンテイクだよ。 Ichika:確かに。アルバムとはぜんぜん別物だね。 マーシン:そう。それに、ソーシャルメディアは一歩ずつのプロセスなんだ。50個のうちの1個が成功する。そして、成功した動画に似たものを作っていく……その積み重ねだよ。そのうえで自分のスタイルと出会う。君はどう思う? Ichika:自分も考え方はほぼ同じで。音源作品とは違って、動画は自分のプレイスタイルを拡張していく実験的な場所と捉えている。SNSは試行錯誤、壁打ちの場なんですよね。自分の場合は。どちらかというとギターのプレイだけを見せる。ギターって縦に長い楽器だから、動画としては斜めに押し込むと一番デカく見える。最近はそういう撮り方を結構やっています。 マーシン:おもしろい! Ichika:(スマートフォンで動画を見せながら)こうやって撮っている動画は視聴数が伸びている。狙って作ると派手なプレイが映えやすくなるし、見てもらえるようになるんですね。そうやって見られる機会を設定しつつ、音源では、自分がやってみたいことや、曲として完成に至っていないものを曲にするための練習をしています。その中でいい感触を掴んだものは、曲に落とし込んで作品にする。そういうふうな使い方をしています。 マーシン:僕らの動画のスタイルは全然違うんだよね。Ichikaは斜めから手元を撮っているからギターが大きく見える。僕は逆で、少し離れた距離から撮っていて、頭から腹のあたりまで映っている。それに、カメラがよく動いているね。 Ichika:エレキはアコースティックギターよりサイズが大きいからね。 マーシン:確かに、エレキギターを縦に見せるのは難しいね。でもこれは良い例で、スタイルは違うけど、僕らは同じプラットフォームで成功している。つまり、オンラインでビューアーを増やしたいとして、最優先事項はカメラの位置や手元の見せ方じゃないということ。 Ichika:そう、あまり気にしなくていい。音楽が良ければね。 マーシン:パフォーマンスが一番!