阪神・佐藤輝&才木「同学年コンビ新春対談」 25年の目標から、海の向こうへの「憧れ」まで語り尽くす
阪神・才木浩人投手(26)と佐藤輝明内野手(25)が、新春対談を行った。猛虎で投打の中心を担う同学年コンビ。25年シーズンの目標、獲りたいタイトルなどを、たっぷりと語り尽くした。将来的なメジャー挑戦を視野に入れる2人は、海の向こうへの「憧れ」も吐露。佐藤輝は才木から「先発登板時に毎試合1本塁打4打点」の鬼ノルマを課されて苦笑する一幕もあり、新春にふさわしい華やかなクロストークは大いに盛り上がった。(取材・構成 遠藤 礼、八木 勇磨) 才木 新年、あけましておめでとう。 佐藤輝(以下、佐藤) あけましておめでとう。浩人と2人で対談をするのは初めてだね。 才木 初めてだね。 佐藤 お互い、普段から野球の話はあまりしないよな。 才木 ところで、お互いの第一印象は覚えている? 佐藤 最初に話をしたのは、入寮時かな。“おお、才木やん。よろしくな”みたいな。 才木 そうやな、そんな感じだったな。 佐藤 僕からしたら、同級生だけど、(プロの)先輩みたいな感じだった。風格があった。もう(プロで先に)4年やっているぞ、みたいな。 才木 ちょうど20年の手術(※1)前だった。輝が大学4年生の時。鳴尾浜球場での試合(※2)に僕が登板した。(初対面は)“おお~、近大の佐藤輝明ね”みたいな感じだったな。デカかったから(笑い)。 佐藤 ところで、チーム内では年齢も中堅の世代に差しかかってきたけど、後輩への接し方で意識していることはある? 才木 特にないかな(笑い)。普通にやっているだけ。普通にやることをやる。サボっているわけでもないし、かといって、後輩の前でめちゃくちゃ頑張っているわけでもない。 佐藤 そうだね。原口さん、糸原さんも代打で出ていって、良い場面で打つ。凄く練習しているから、そういうところでも結果が出るんだなと感じる。結果を出すことが、一番背中で示すことになるし、後輩も見てくれている。(大事なのは)そこじゃないかな。 才木 数年後には30歳の節目を迎えるな。輝の30歳はイメージできない…。どんな感じになっているんだろうな。 佐藤 30歳といったら、(選手としては)もうピークに近いくらいだと思う。浩人は凄いピッチャーになっているんじゃないかな。もし今、対戦したらどうなるだろう。(打つのは)難しいとは思うな。 才木 真っすぐゴリ押しだね。で、カーブを投げるよ(笑い)。 佐藤 今季に向けて、お互いに「ノルマ」を設定しようか。 才木 僕が投げている試合では、必ず1本ホームラン打ってください(笑い)。そして打点4でお願いします。僕の登板時だけでもホームラン25本と100打点。あざっす!(笑い)。 佐藤 浩人にはケガなく、1年間頑張ってほしいね。 才木 輝にだけエグいノルマを与えてしまったな(笑い)。輝は入団以来、大きなケガはないね。 佐藤 そうだね。大きいケガはないけど、これから年齢を重ねたらどうなるかわからない。そこは気をつけたいなと思う。 才木 今季はチームの優勝と、タイトルを総獲りできるシーズンにしたいと思っている。自分のできることをしっかりやって、昨年以上の成績を残せるように頑張りたい。 佐藤 僕もしっかり頑張る。優勝はもちろん、“浩人と僕の活躍で勝った”と言われるように頑張ろう。 ************** 佐藤 年末年始は、どう過ごしている? 才木 野球以外では何もしていないな(笑い)。練習か、家にいるか。 佐藤 僕も、特に何もしていないな。ゆっくりしているよ。浩人は、今年27歳になるけど、肉体的な変化は感じる? 才木 まだ感じないかな。多分まだ、(選手としての)ピークは来ていない感じはするかな。まだまだいけそうな雰囲気はある。 佐藤 僕も、フィジカル面ではまだ上がっている途中かなと。どんどん成長している感じはあると思う。今年、重点的にやりたいことは? 才木 自分はフィジカルの強化と、細かい動きかな。細かい動きのところに、ちゃんと脳から神経へ(指令が)しっかり伝わるように…とかのバランス(の強化)をやった上で、その土台を上げるためのフィジカルウエート(トレーニング)をしっかりやっている感じかな。 佐藤 僕も今はウエートをしっかりやっている。(オフは)そんなにバットは振り込まずに、トレーニングが中心。12月はそんな感じだった。 才木 輝は、いい意味で鈍いというか、いい意味で鈍感。あまり(周囲を)気にしすぎない感じがする。自分のペースでやって、自分のやりたいことをやって、というのは見ていて凄い。これだけ注目をされていたら、結構周りの目を気にすることもあるかもしれないけど、それもない。自分のやることをしっかりやって、必要なことは何かを、ちゃんと理解できているのは見ていて凄いと思う。 佐藤 浩人は、グラウンド上では見ての通り。クラブハウスの中でも独自のトレーニングとかをやっている。そういう研究熱心さがないと、やっぱり上にはいけない。本当に凄いと思う。野手はあまりしない独特のトレーニングだもんね。ピッチャーは、そういう独特のトレーニングをやる人が、何人かいるけど、その中でも浩人は特殊な方。 才木 いろいろやっているね。 佐藤 研究熱心だよな。 才木 いいと思ったことはやるし、これは(強化に)つながりそうだな、と思ったことはやるね。 ――契約更改では、将来のメジャー挑戦(※3)への願望を表明した。 才木 言葉に出すことでプラスに働いたことは…あまりないかな。言葉に出して言ったことを後悔しています。チーム優先は変わらない。優勝を目指す、ということは変わらずやる。 佐藤 もちろんチームが優先。 才木 藤川監督にもフォロー(※4)していただいて、本当に申し訳ないと思った。凄くフォローしてくださっているコメントだったので、あんなことを言わせてしまった…というか、僕が(メジャー願望を)しゃべってしまったので、本当に申し訳ないな…と率直に思っている。 ――3月にはメジャー球団と試合(※5)がある。 佐藤 どんな球を投げるのか見てみたいし、雰囲気やプレースタイルも楽しみ。(メジャーと)対戦する機会はないので、やっぱりそういうものを直接肌で感じてみたいかな。 才木 メジャーの選手はポテンシャルやレベルが高い選手ばかり。それをじかに感じたいという思いは普通にある。技術どうのこうのではなく、パワー、スピード、そういうシンプルな凄さ。誰が見ても凄いなと思う凄さを感じたいかな。 佐藤 僕は単純に憧れがある。幼いころからメジャーの試合をいっぱい見ていたから。もちろん日本の野球も見ていたけど、それよりもメジャーの豪快なプレーというか、そういうのに凄く憧れがある。幼いころからの夢だったね。 才木 (メジャーは)一番うまい人たちが集まる場所だと思っているから、そういう場所でやりたいという憧れは僕もあるかな。 佐藤 浩人が今年、個人的に目指すところは? 才木 自分はタイトル総獲りを目指す。それが一番チームのためになると思うし、優勝に近づくために大事なところかなと。昨年は何もタイトルを獲れていないので、そこは一番目指したいところかなと思っている。 佐藤 心強いね。僕の場合は、本当に1年間、しっかり安定してやるというのがまず目標。頑張ります。 才木 輝の中で、獲りたいタイトルも出てきた? 佐藤 もちろん(何か)獲りたい。でも年々やるごとに、甲子園球場の厳しさがわかってきた。それでもやっぱり、ホームランだったり、打点というのは獲りたいタイトルではあるね。投手からすると広い甲子園球場は…。 才木 最高だね(笑い)。甲子園でホームランのタイトルはなかなか難しいよね。(広さと浜風で)ホームランが出にくいから。神宮、東京ドーム、横浜スタジアムだったらね。それはマジでかわいそうだと思う…。でも、輝には何かやってくれそうな雰囲気もある。昨年も、巨人戦(※6)で僕が初回に5連打で2点を取られて、それを輝が3ランを打ってひっくり返してくれた。しかも左中間に。あれはビックリした! 佐藤 中日戦(※7)も打ったしね。雨が降ったとき。 才木 バットをずっと持って走っていたし(笑い)。バット離さん、離さん!みたいな(笑い)。打ってほしいところでちゃんと一発を打てるところは凄い。それは凄く助かる。 佐藤 浩人も昨年は自己最多13勝。同い年として心強いし、村上もそうだけど、やっぱり同い年が頑張ってくれると、僕も凄くうれしい。頑張らないといけないな、というのは感じるね。お互い頑張ろうな。 (※1)19年5月に右肘痛を発症。20年11月に右肘内側側副靱帯(じんたい)再建術(通称トミー・ジョン手術)および右肘関節鏡視下滑膜切除術を受けた。 (※2)20年8月16日にプロアマ交流戦で対戦。近大・佐藤は初回に才木から中越え二塁打を放つなど4打数2安打1盗塁。 (※3)才木は24年12月20日、佐藤輝は同23日に契約更改交渉の席上で、将来的なメジャー挑戦の意向を球団に伝えた。 (※4)才木と佐藤輝の発言を受け、藤川監督は24年12月24日に取材対応。自身は現役時代に、海外FA権を行使してメジャー移籍した経験を踏まえ「アスリートは高い目標をどんどんつくらないと伸びていけない。彼らの気持ちは間違っていない。一人のアスリートとして理解できる」と話した。 (※5)東京ドームで開幕シリーズを行うドジャースとカブスは、プレシーズンゲームを実施。阪神は3月15日にカブス、16日にドジャースと対戦する。 (※6)24年8月31日、恒例の長期ロードを終えて甲子園に戻ってきた一戦。才木は2回以降に立ち直ると、0―2の6回2死一、二塁で佐藤輝が戸郷から決勝の逆転3ランを放った。 (※7)24年4月21日の中日戦(甲子園)は雨のため53分遅れで開始。両軍無得点で迎えた6回2死一、二塁から佐藤輝が先制3ラン。才木が7回表を無失点に抑えると、降雨コールドで試合終了。雨のため室内で才木と佐藤輝のヒーローインタビューが実施された。 ◇佐藤 輝明(さとう・てるあき)1999年(平11)3月13日生まれ、兵庫県西宮市出身の25歳。仁川学院では甲子園出場なし。近大では新リーグ最多の通算14本塁打。20年ドラフト1位で阪神入団。長打力に優れ、NPBの左打者では初となる新人から3年連続20本塁打を達成。23年アジアプロ野球チャンピオンシップ日本代表。1メートル87、96キロ。右投げ左打ち。 ◇才木 浩人(さいき・ひろと)1998年(平10)11月7日生まれ、神戸市出身の26歳。須磨翔風では甲子園出場なし。16年ドラフト3位で阪神入団。19年に右肘を故障し、20年オフに手術を受けて育成選手に。22年5月に支配下選手に復帰。24年は初めて規定投球回に到達し自己最多の13勝。24年プレミア12日本代表。1メートル89、88キロ。右投げ右打ち。 ≪取材後記≫ 写真撮影を含め、取材時間は30分足らず。時間と戦う記者の矢継ぎ早な質問全てに、丁寧に対応してくれた2人には感謝しかない。それはシーズン中も同じ。彼らが報道陣の問いかけを無視することは皆無。普段の人柄がそのままにじみ出たような、明るく朗らかな紙面に仕上がった。 両人の表情が唯一曇ったのが、メジャーに関する質問を投げかけたときだった。「藤川監督にフォローさせてしまい、申し訳ない」とうつむいた才木。佐藤輝も「(フォローは)ありがたい」と語りながらも、それまでと声色は異なった。一部の批判的な声を、当人たちも耳や目にしたはず。前途有望の若虎が夢を語っただけなのに…。何でも非難の的になる昨今の時世はどう考えてもアンフェアだが、そのマイナスな声すら力に変えることが、2人にはできる。 才木浩人と佐藤輝明。兵庫が生んだスターが、世界最高峰の18.44メートルを挟んで相まみえる――。初夢で終わらせてほしくない。 (八木 勇磨)