親会社のブランドを使うブランディングと使わないブランディングの違いとは? 元日本マーケティング学会会長がシンプルに解説
親ブランドを隠す効果とは
(1)積極的に親ブランドを隠す戦略 ブランドや企業のM&Aが盛んになるにつれ、子ブランドのみで確立していたほうが有利なケースが増加。親ブランドを隠す戦略がとられるようになった。 (2)親ブランドを匂わせるか? さらに隠すか? 親ブランドの存在をにおわせるほうが子ブランドにとって都合がよい場合もあれば、隠すことで子ブランドが存在感を発揮できるケースもある。
親ブランドと子ブランドとの距離
(1)親から自立タイプ 親ブランドの力を借りなくとも、子ブランドだけで知名度も信頼度も確立されている。 〈例〉BMWとロールス・ロイス (2)親にべったりタイプ 親ブランドの名称をあえて子ブランドにも入れ、知名度や信頼度を大いに活用する。 〈例〉コカ・コーラとダイエット・コーク (3)ほぼ兄妹タイプ 親ブランドと子ブランドという関係もなく、どちらの力もほとんど借りず、同等にブランドとして成立している。 〈例〉ユニクロとGU (4)親の力を少し借りるタイプ 積極的に親ブランドの存在をアピールしないが、わざわざ隠しもせず、親ブランドの力を借りる。 〈例〉トヨタ自動車とLEXUS
ブランド名をアピールするだけがブランド戦略ではない
街にある看板広告などを見ると、印象的なキャッチコピーとロゴのみを用いているものがあります。ここまで述べてきたように、ブランド名や企業名をアピールすることだけがブランド戦略ではなく、ブランド名を使わないブランド戦略もあるのです。 親ブランドとの関係性や子ブランドが持つ力などによって、施策はさまざまです。最近は企業やブランドのM&Aが盛んなため、子ブランドが親ブランドに関係なく育成されるケースが増えていくでしょう。 田中洋(タナカヒロシ) 中央大学名誉教授 京都大学博士(経済学)(株)電通でマーケティングディレクターとして21年間の実務を経験後、法政大学経営学部教授、コロンビア大学ビジネススクール客員研究員、中央大学ビジネススクール教授などを経て2022年から現職。日本マーケティング学会会長、日本消費者行動研究学会会長などを歴任。マーケティング戦略論、ブランド戦略論、消費者行動論、広告論などを専攻。日本マーケティング学会よりマーケティング本大賞/準大賞/ベストペーパー賞、日本広告学会賞、中央大学学術研究奨励賞、東京広告協会白川忍賞(特別功労賞)などを受賞。著書に『ブランド戦略論』(有斐閣)、『企業を高めるブランド戦略』(講談社)など多数。 協力:新星出版社 Fun-Life! Book Bang編集部 新潮社
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