なぜ名門ウィリアムズが失態?2019年のF1に混乱を招いているレギュレーション変更の是非
ウィリアムズは名門ではあるが、ビッグチームではない。フェラーリ、メルセデス、ルノー、そして今年からアルファロメオに買収されたザウバーは自動車メーカーからのサポートがあり、レッドブルはメインスポンサーである飲料メーカーからの強力なバックアップがある。これに対して、自動車メーカーのサポートも、巨大なメインスポンサーも持たないウィリアムズは、財政的には小規模チームと言っていい。 また昨年夏に経営破たんに陥り、ランス・ストロールの父である億万長者ローレンス・ストロール率いるコンソーシアムに買収されたフォース・インディア(その後「レーシングポイント」に改名)も、経営破たんに陥っている間に翌年のマシンの開発が滞り、新車の完成が予定よりも大幅に遅れた。幸い、レーシングポイントはテスト初日には間に合ったが、初日からトラブル続きという苦しいテストが続いている。 レギュレーションを変更すれば、開発費がかかる。このような状況が想像できていたにもかかわらず、どうしてFIAはレギュレーションを変更したのか。それは、減少しているオーバーテイクを増やすためだった。 2年前の変更により、マシンはダウンフォースが増え、昨年は21戦中16戦でコースレコードが更新されるほど、F1はスピードアップした。しかし、その副作用として、前を走るマシンに近づくと、前車が発生させる乱気流の影響を受け、結果的にオーバーテイクが困難になってしまった。 この乱気流を抑制するために、FIAはフロントウイングのデザインをシンプルにするようレギュレーションを変更。その結果、2018年よりも多少スピードが遅くなっても、オーバーテイクを促進させることで、これまでよりもエキサイティングなF1にしようと考えた。 ところが、2019年のテスト初日、トップタイムをマークしたセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)のタイムは、1分18秒161。前年のテスト初日のトップタイム(1分20秒179/ダニエル・リカルド/レッドブル)よりも2秒も速かった。 果たして、オーバーテイクは増えるのか? もし、増えなければ、今回のレギュレーション変更は開発費を浪費させ、小規模チームを苦しめるだけの悪法となってしまう。 (文責・尾張正博/モータージャーナリスト)