シルクの医薬効果に期待 奄美大島のアーダン、鹿児島大にラボ設立
シルクを用いたスキンケア商品の製造・販売を手掛ける鹿児島県奄美大島のアーダン(奄美市名瀬、西博顯代表取締役)は今年4月、鹿児島大学の産学交流プラザ内にグループ会社「アーダンラボ」を設立し、シルクの医薬効果に関する研究を進めている。アーダンラボの代表取締役を務めるのは、アーダンと10年以上共同研究を行ってきた皮膚科学博士で同大学名誉教授の金蔵拓郎氏(66)。シルクの付加価値を高め、医薬目的での実用化を目指す。 アーダンと金蔵氏は2012年から共同研究を開始。細胞やマウスを使った実験を通してシルクが皮膚の再生を促す効果があることを証明し、18年に特許を得た。この研究成果を基に開発した同社初の医薬部外品「シルケイド」(スキンケアクリーム)は、今年の「かごしま産業技術賞」で大賞を受賞した。 新設されたラボではさらなる実験や検証を重ね、皮膚細胞の増殖を助けるシルクの効果・効能の根拠を提示していく。研究を基にシルクの具体的な活用方法を提案し、アーダンと医薬部外品の商品開発を進めるとともに、将来的には医薬品会社との共同開発にもつなげたい考えだ。
龍郷町のアーダン工場では7月10日、シルクの活用について情報交換する座談会が行われた。金蔵氏と東京大学大気海洋研究所の横山祐典教授(54)、京都工芸繊維大学の岡久陽子准教授(45)など専門家ら10人が参加した。 金蔵氏がラボで取り組む研究内容を共有したほか、アーダンとシルクを使ったサンゴに優しい日焼け止めの共同開発に取り組む横山教授が実証実験の進捗などを報告。岡久准教授はシルクを新たな補強材に加工する材料開発について紹介し、参加者らはシルクの可能性に期待を高めた。 アーダンの西代表取締役(62)によると、同社では原料となるシルクを奄美で大量生産できるよう養蚕設備も拡大中。「いずれは養蚕から商品製造、研究までを地元で一貫して行うことが目標。一次産業や原料加工など製造過程での雇用を増やし、奄美から若い研究者も出てほしい」と展望を語った。 金蔵氏は「シルクの持つ機能は明らかにできている。一刻も早い社会実装と奄美初の医薬品を世に出すお手伝いができたら」と意気込んだ。