デフレと資源需要の増加を加速する「AI技術の進歩」
AIによる資源需要の増加
AI技術は非常に効率的だが、依然として大量のハードウェア、エネルギー、素材を必要とし、これが資源需要を押し上げている。まず、AIモデルの運用には膨大な計算能力が必要であり、これらのモデルをトレーニングするにはさらに多くの計算能力が求められる。米国電力研究所(Electric Power Research Institute)は、AIの成長を反映してデータセンターの電力消費予測を引き上げ、データセンターが米国の電力消費の9%以上を占める可能性があると発表した。このような第三者機関の予測は着実に上昇しており、従来の需要源とは異なる速さでの増加が見られる。 さらに、AIはAIシステムを運用するためのハードウェアインフラを構築するため、特定の金属の需要を増加させている。たとえば、銅はデータセンターや電気システムの配線や部品に欠かせない素材である。資源のトレンドを長期的に見てきた中国などの国々は、すでに銅の在庫を数年ぶりの高水準にまで積み上げている。また、最近の事例では、Figure(人型ロボットを開発する企業)やテスラによって、ロボットがAIの意思決定を行い、サービスの提供までこなせることが証明された。これらのロボットは、新たな自動車産業が生まれるかのように、重要な素材を大規模に必要とするだろう。AIはシステムの運用・保守にかかる労働コストを削減するが、これらを動かすための資源の需要はなくならない。 このダイナミクスにより、インフレとデフレの傾向へと二極化する可能性がある。一方では、AIによる効率化のおかげで、顧客サポート、医療、教育、金融サービスなどのサービスにおいてコストが急速に低下し、消費者が恩恵を受けるだろう。他方で、金属、天然ガス、ウラン、工業材料といった資源の価格は、AIインフラの構築と電力需要の増加によって上昇する可能性がある。この需要は、数カ月前の予測を超えるペースで増加し続けている。
Mark Le Dain