新型ミニクーパーのEVとガソリン車、絶妙過ぎる「違うけれど同じデザイン」とは?【新型車デザイン探訪】
BEV版はホイールアーチ・モールも廃止
新型のBEV版はホイールアーチの黒いモールがなくなった。2001年に登場したBMW製初代ミニは、元祖ミニのパッケージングの高効率さをそれよりずっと大きなボディで表現するために、大径タイヤだけでは足らずに黒いモールを採用してオーバーハングを短く見せた。それが今日まで続いてきたのだが・・。 「電動バージョンでは、ホイールアーチ・モールを取り去ることができた」とハイルマー氏。これもシンプル化の大きな要素であることは言うまでもない。「ICEはプラットフォームが違うので、できなかったけどね」。 プラットフォームの違いが、モールを取り去るかどうかの決断を分けた。そのひとつの要因はBEV版のほうがオーバーハングが短いことだが、ハイルマー氏はさらにこう続ける。 「BEVはウインドシールドの丸みが強い。元祖ミニのように短いボンネットを実現したかったからだ」。BEV専用プラットフォームを活かしてオーバーハングもボンネットも短くできたから、モールを取り去る決断に至った。20年以上も続いてきた要素がなくなったので、「ミニらしくない」と思う人もいるかもしれないが、その場合はICE版が選択肢になるだろう。
ミニらしさを進化させるコンバイナー式HUD
なるほどコンソールはBEV版とICE版で少し違うように見えるが、ダッシュボードはどこが違うのか? 「同じに見えるようにデザインしたし、どちらもスペースを無駄にしていないことがアドバンテージだ」とハイルマー氏。「ダッシュボードの高さも違うが、お客様の80%から90%は違いに気付かないだろう」 ちなみにBEV版もICE版もコンバイナー式のヘッドアップディスプレイ=HUDを備える。BMWは視線移動を最小化できるHUDを積極的に採用してきたメーカーだが、ウインドシールドに反射させるのではなく、透明スクリーンのコンバイナーを使って虚像表示するのはミニだけだ。 先代もコンバイナー式だったが、それは「ミニの特徴として、ウインドシールド傾斜が立っているからだ」とハイルマー氏。ウインドシールドに反射させるタイプのHUDでは、反射角の関係で光源である液晶ディスプレイのレイアウトが難しい。そしてコンバイナー式を採用することで、前述の丸いウインドシールドも実現できた。曲率の強いウインドシールドで反射型のHUDを使うと、投影される虚像が歪んでしまう。 そうした条件があるなかでもHUDにこだわったのは、もちろんシンプル化のためだ。視線移動を最小化するためにドライバーの正面に情報表示するが、メーターパネルは置かない。だからセンターの円形ディスプレイの存在感が際立つ。不可欠なものだけを残して個性を強める、という『カリスマ的なシンプルさ』の神髄が、まさにここに表現されているのだ。
千葉 匠