新型ミニクーパーのEVとガソリン車、絶妙過ぎる「違うけれど同じデザイン」とは?【新型車デザイン探訪】
シンプルでも付加価値のあるインテリア
「インテリアも同じだ」とハイルマー氏。「ステアリングホイールとセンターのアイコン、トグルバーだけあればよいという基本的なアイデアに至ったとき、エンジニアは我々のその提案を信じてくれなかった」 センターのアイコンとは直径240mmの円形ディスプレイのこと。元祖ミニが丸いメーターをセンター配置していたことに由来する。その下のトグルバー(レバー型のスイッチ)と共に、BMW開発になった01年のミニからずっと継承してきた「ミニらしさ」だ。 もちろんダッシュボードやセンターコンソールも必要なのだが、ハイルマー氏が大事にしたのはステアリングホイールとセンターディスプレイ、トグルバー。「エンジニアから『それだけでは成り立たない。あれもこれも必要だよね』を言われたけれど、『とにかく飛び込んでみよう』と言って、それをやり通した。タフだったけどね」とハイルマー氏。何がタフだったかと言うと・・。 「シンプルにしようとするときのリスクは、それがシンプルに見えるだけで終わってしまうことだ。要素を減らすことで安っぽくみえてはいけない。そんな思いがあって、ダッシュボードにニット素材を張ることを決めた。これが温かさ、付加価値、質感をもたらしている」 新型のダッシュボードは、ICEもBEVもリサイクルされたポリエステル繊維によるニット素材で包まれている。それだけでなく、カタチもまったく同じに見えるのだが、そこは後の話題にしてエクステリアに戻ろう。
どちらもクーパーだから同じに見えるようにした
エクステリアのICE版とBEV版の違いは、ボンネットの開口線やヘッドランプのリングだけではない。そもそもプラットフォームが異なり、ディメンションも違う。 「ICEのプラットフォームは先代に由来する。技術的にはかなり進化したけれど、先代ベースだ。BEVは新しい電気自動車専用プラットフォームであり、ミニ・エースマンと共用する」 エースマンは22年にコンセプトカーとしてデビュー。近く量産型が正式発表されるはずで、3ドアのミニ・クーパーとファミリー向けのカントリーマンの間を埋める5ドアのBEVとなる(新型カントリーマンはBMW X1と同じプラットフォーム)。 プラットフォームが違うにもかかわらず、新型ミニ・クーパーのICE版とBEV版はとても似ている。初見では違いに気付かないほどだ。「イエス。我々はICEとBEVそれぞれに、目的に合ったアーキテクチャーを手に入れた。そしてデザイン視点での我々のゴールは、それらを同じに見えるようにすることだった」とハイルマー氏。 「プラットフォームが異なれば、デザインは違う方向に進みがちだが、どちらもミニ・クーパーだから、できるだけ似させるように対処した。トリッキーな仕事だったけどね」 全長はBEV版のほうが15mm短いが、ホイールベースは30mm長い。つまりオーバーハングが短いわけだ。「後席に座ると、ホイールベースの違いを感じてもらえると思う」とハイルマー氏と語る。