《W杯最終予選》日本のグループCが「ラッキー」と言えるワケ
アジアは強くなってきているのか
最近、解説者や評論家は口をそろえて「アジアも強くなっている」と言うが、本当なのだろうか? 僕はこの点についても懐疑的だ。 最近急成長しているのがインドネシアだ。数年前までタイやシンガポール、ベトナムの後塵を拝していたインドネシアだが、東南アジアから最終予選進出に成功したのはインドネシアだけとなった。 旧宗主国であるオランダを中心に欧州にはインドネシア人コミュニティーが存在する。そうした、欧州生まれ、欧州育ちで欧州でプロとなった選手たちを代表に加えて強化しているのだ。だが、成長はどこまで続くのだろうか? たとえば、インドネシアより一時代前に強化が進んでいたベトナムは、成長曲線が鈍化しており、中国との競り合いの末に最終予選進出を逃した。 中東地域でもそうだ。ある時期にUAEやオマーンが強くなったと思っても、しばらくすると頭打ちになる。そして、次の数年はヨルダンが強くなる……。そんなアップダウンの繰り返しなのだ。 「中進国(中所得国)の罠」という言葉を最近耳にすることが多い。貧しい国が経済発展を遂げて、国民1人当たりGDPが1万米ドルほどになると、そこで経済成長が停滞してしまう現象のこと。世界銀行のレポートで使われた概念である。 つまり、サッカーの世界でも同じような現象が起きているのだ。 代表チームをある程度まで強化することはできても、「中進国」の域を越えることは難しい。そのため、いつまでもアジア大陸における日本、韓国、サウジアラビア、イラン、オーストラリアの牙城を脅かす国が現われないのだ。 グループCの戦いで日本、オーストラリア、サウジアラビア以外が勝ち抜く可能性はほとんどない。
後藤健生