「私たち俳優はインテリア業者」…韓国の名優チェ・ミンシクが語る新作「破墓/パミョ」と映画に臨む思い、そして大杉漣の一言
韓国の俳優、チェ・ミンシクが、主演作「破墓/パミョ」(チャン・ジェヒョン監督)の10月18日からの日本公開を前に来日した。韓国映画の現在の活況の導火線となったメガヒット作「シュリ」(1999年)、2004年のカンヌ国際映画祭グランプリ(審査員特別大賞)を受賞した「オールド・ボーイ」(03年)をはじめ、幾多の作品で忘れがたい演技を見せてきた62歳の名優。映画に臨む思いを尋ねると、自らを「インテリア業者」にたとえた。どういうことか。いろいろ聞いてみた。(編集委員 恩田泰子)※文中敬称略
熟練の風水師演じる
「破墓」は、超自然的要素がたっぷりの超常スリラー。ある裕福な一族を苦しめてきた奇病の連鎖の原因は、家族の墓にあり。そう踏んだ巫堂(ムーダン)(韓国のシャーマン)の女(キム・ゴウン)とその弟子(イ・ドヒョン)は、熟練の葬儀師(ユ・ヘジン)、風水師(チェ・ミンシク)とともに、改葬を進めようとする。が、墓に潜んでいた「やばいもの」が、まがまがしい事態を引き起こす。
監督・脚本のチャン・ジェヒョンは、「プリースト 悪魔を葬る者」(2015年)、「サバハ」(19年)といったオカルト的な要素をはらんだ作品で評価を高めてきた。
「破墓」では、奇想に富んだストーリーを、分厚い映像と演技巧者たちのチームプレーとともに描き出し、観客を、映画の中へ引き込んでいく。巫堂たちによる臨場感たっぷりのおはらいシーンなど派手な見せ場だけでなく、登場人物たちのちょっとした一挙一動が作品に厚みを出す。たとえば、チェ・ミンシク演じる風水師キム・サンドクが墓周辺の土をすばやく確かめる様子はさりげなく効果的だ。
もっとも、チェ・ミンシク自身は「怖いのが苦手なので、個人的には、オカルト的な作品はあまり好きではありませんでした」と明かす。では、なぜ、そのキャリアの中でも異彩を放つ本作への出演を決めたのだろう。
「助監督のような気持ちで臨んだ」
「この作品に臨むとき、私は、風水師キム・サンドクを演じるということに加え、チャン・ジェヒョン監督が映画をつくる作業過程を見てみたいという思いを抱いていました。『プリースト』や『サバハ』を見て、とてもいい作品だと思っていたのです。チャン監督は、非現実的なもの、形而上(けいじじょう)学的なものを、リアルに描いて観客のみなさんに届けるような作品を作る。細密な模様をびっしりとすきまなく織り込んだカーペットのように、映像をひとつひとつ彫刻して完成度を高めていく」