“花の82年組”北原佐和子、介護の現場で18年 アイドル時代の経験が今の活動の支えに
◆40代で飛び込んだ介護業界 初めての現場では「失敗した」と感じたことも
――読ませていただいて、介護だけではなく、仕事や日常生活にも通ずるようなこともたくさんありました。過去の出来事から「人のために何かがしたい」と思い介護職に踏み出されたとのことですが、実際に始められていかがでしたか? 北原:自分が過去に体験したことが福祉に結び付くところがいくつかあって興味を持ち、ホームヘルパー2級を取りました。取得後、実務で活かそうと30軒くらいの施設に電話をしたのですが、女優業とのダブルワークということもあって、軒並みお断りされたんですね。そんな中最後の1軒に一度来てみなさいと言われたんです。 でも実際に施設に行き、おじいさんおばあさんに注目された時は逃げ出したくなりました。 ――アイドルや女優としてたくさんの舞台を踏まれてきた北原さんがですか! 北原:関係ないですよ~(笑)。そこに、大声を上げながらテーブルを叩いている車いすのおばあさんがいたんです。そのおばあさんを見た時には、正直「失敗した」って思いました。でも、30軒連絡してやっとつかんだ機会なので、「失敗した」は許されない。ここにとどまるしかないと思ったのがスタートでした。 その後、現場で働いていく中で生活困窮者の方と触れ合うことが多く、ソーシャルワーカーになりたくて社会福祉士の取得を考えました。でも、それには大学を出ていることが必要で。私は芸能活動を始めるために定時制の高校に転校し、デビューして忙しくなったこともあって卒業できておらず無理だとなりまして。ホームヘルパー、介護福祉士として働く中、利用者の方やご家族と接しているうちに、それぞれの利用者さんに合ったプランの必要性を感じ、そんなプランを立てられるようになりたいと、ケアマネジャーに目を向け始めました。 ――さらに、准看護師の資格も取られました。50代になって看護学校に通い資格を取るというのは、体力的にも精神的にもかなりきつかったのでは? 北原:1年目は学校に通いながら仕事もしていたんです。1年目ですでにテストが何教科もすごく細かく分かれていて、毎週毎週テストが続く日々。これ来年は実習も半年ありますし、ちょっと厳しいなと思って。なので2年目は夏休みとかに仕事を集中して、ほかの期間は勉強だけに専念しました。 ――その意欲に本当に頭が下がるのですが、子どものころから勉強はお好きだったんですか? 北原:全然!(笑) よくそう聞かれるんですけど、好きか嫌いかで言ったら嫌いでしたね。でも、独学で勉強できるタイプじゃないとよく分かっていたんです。だから、勉強会に参加をしたり、講座に申し込んだりと自分で環境を作っていきました。 ――芸能活動の経験が介護の現場で活きることもありますか? 北原:いっぱいありますね。女優っていうのは、先輩の芝居を徹底的に見なさいって言われるんです。中村玉緒さんとご一緒だったときには、上手や下手の舞台袖から毎日見ていました。なので介護の仕事をすることになって、現場で先輩たちのケアや利用者さんとの接し方を見て学ぶ、見て盗むことが自然とできました。先輩たちだけじゃなく、利用者さんの表情から何かを感じ取るというところも、女優の経験が活きていると思います。