“花の82年組”北原佐和子、介護の現場で18年 アイドル時代の経験が今の活動の支えに
◆ファンの笑顔が見たい アイドル時代の思いが介護に臨む姿勢の原点に
――アイドル時代のお話も伺いたいのですが、デビュー当時のことで特に印象に残っている思い出はありますか? 北原:あまり覚えていることがなくって…。それこそマネジャーさんが鳴らすピンポンで起きて、タクシーに乗ってまた寝ちゃって。新幹線の始発に乗って、まずはカレーかうなぎを食べる。それが定番だったんです。今思うと朝イチからよく食べられたなと思うんですけど(笑)。食べてまた寝て、目的地に着いたらタクシーに乗って寝て、現場まで行って歌を歌って。歌を歌ってるときのことは、親衛隊の人たちが声援を送ってくれたことをすごくよく覚えています。とても緊張してしまう体質だったので、その声援で緊張がほぐれて、1人で歌っているんじゃないんだなっていう気持ちになれたのは忘れることができない思い出ですね。 そのころはファンの皆さんの笑顔を見ることが自分の中では喜びだったんですよね。「勇気づけてもらってます」とか、「『マイ・ボーイフレンド』何回も聴いています」とか言ってもらえるととってもうれしくって。その感覚が今、利用者さんたちの笑顔を見たいという思いにつながって、私の中では喜びになっているんです。 ――利用者さんのお子さんには、北原さんのファン世代の方も多いのでは? 北原:そうですね。利用者さんのご家族のほうから話しかけてくれたりするので、それがきっかけで利用者さんの施設での様子を送迎のときにお話させていただいたり。そういう意味ではいい関係性が育みやすいです。 ――今年還暦を迎えられました。これからどんな人生を歩んでいかれたいですか? 北原:私は「人生のたとえ99%が不幸だとしても最後の1%が幸せならばその人の人生は幸せなものに変わる」というマザー・テレサの言葉を大切にしているんです。利用者さんのこれからの人生に笑顔が多くあればいいなって思っているので、その方の視界に最期に映るのが自分だったらいいなって。その利用者さんにとって、「あぁ。この人に看取られて幸せだったな」って思ってもらえたら、こんな喜びはないと思うんです。そういう自分でありたいなって思うので、やはりケアマネとしてしっかりと利用者さん、そしてご家族と向き合っていきたいなと思います。 女優のお仕事もご縁があれば、ぜひやりたいと思ってます。 ――最後に、北原さんの“介護”への思いを聞かせてください。 北原:介護って利用者さんにとっての日常なんですよね。だから、その日常を、利用者さんに生き生きとした時間を過ごしていただくには何が必要か、常日頃から考えています。その中で、利用者さんの喜びを同じように自分も実感できたら、それって、私がアイドルの時に体験したファンの人からいただいた喜びとすごく重なる部分が多いように思います。利用者さんにより豊かで笑顔の多い日常を過ごしていただくことを第一に考える私でありたい。それが利用者さんにとって必要な介護ってことなのかなって思うんです。時間がかかっちゃいましたが、還暦になった今、やっとそこをしっかり実感できていますし、そしてそのことを何よりも大切に考えています。 (取材・文:田中ハルマ 写真:高野広美) 北原佐和子著『ケアマネ女優の実践ノート』は、主婦と生活社より発売中。