英のEU離脱、米のトランプ現象……「内向き志向」は世界の潮流になる?
しかし、その一方で、今回の国民投票の結果は、ヨーロッパ全域で極右政党などによる反EU運動も活発化させるとみられます。ところが、一般的に極右政党は、既存の国境線に沿った国家を維持・発展させることを強調します。したがって、各国内のローカルな独立運動とは、基本的に利害や目標が一致しません。 今回の英国における国民投票は、これらの相反する政治的エネルギーを加熱させました。その意味で、この選挙結果は、既に各地で高まっていたナショナリズムの一つの到達点であると同時に、さらなるナショナリズムの高まりと交錯のための通過点でもあるといえるでしょう。 戦後、特に1990年代以降の自由貿易を軸とする国際秩序は、各国の直接衝突を避けるうえで有効だったといえます。しかし、そのなかで鬱積した不満は、世界金融危機などを契機に、ナショナリズムの高まりという形で噴出しています。これらの「グローバル化への反動」が各地で生まれる状況からは、世界が新たな秩序の「産みの苦しみ」の時代に入ったことを見出せるのです。
------------------------------------------------------ ■六辻彰二(むつじ・しょうじ) 国際政治学者。博士(国際関係)。アフリカをメインフィールドに、幅広く国際政治を分析。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、東京女子大学などで教鞭をとる。著書に『世界の独裁者』(幻冬社)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、『対立からわかる! 最新世界情勢』(成美堂出版)。その他、論文多数。Yahoo! ニュース個人オーサー。個人ウェブサイト