〈年金23万円・貯金3,000万円〉の78歳父「金はすべて使いきる」と高級老人ホームに入居も、53歳長女への夜11時の電話で「今すぐ帰りたい」と涙した理由
終活を万全にこなし「高級老人ホーム」に入居していった父だったが…
「昔からドがつくほど、ケチだったんですよ」と長女の裕子さん(仮名・53歳)がいうように、無駄だと思うことには1円も払わないが信条だった斉藤さん。自宅を売却する手続きも、老人ホーム入居の手続きも、すべてひとりで進めていったっといいます。 ――少しくらい、相談があってもいいと思いますが、もう諦めています。あれが父なんで ――意思がはっきりしていて、自分ですべてやるので、助かるといえば助かりますが…… 株式会社NEXERが60歳以上の全国の男女に対し行った『終活の必要性に関するアンケート調査』によると、「終活が必要か?」の問いに対して、82.4%が「はい」と回答。「家族や遺族に迷惑をかけないため」など、残される家族の負担を考える意見が目立ちました。また終活が必要と考える人たちのうち、実際に終活をしている/予定がある人は24.1%。具体的にしていること/しようと思っていることとしては、「財産・遺産の整理」が48.5%と圧倒的。ほか「荷物の整理」16.0%、「エンディングノートの準備」13.8%、「医療や介護の準備」9.8%と続きます。斉藤さんのように自宅の整理を自分でする人/する予定の人は、結構多いと考えられます。 準備万端が整い、自らが選んだ高級老人ホームに入居した斉藤さん。さぞ優雅な生活を送っているかと思えば、そうではなかったと長女の裕子さん。それは斉藤が老人ホームに入居してから半年ほど経ったある日のこと。夜11時をまわったころ、斉藤さんから電話があったそうです。 ――そんな時間に電話が鳴るとドキッとするじゃないですか。ただ話はなんてことのない世間話で。ちょっと変だなと思ったんです なぜ、世間話をするために夜の11時に電話をかけてきたのか……そこでふと、裕子さんが気付いたといいます。 ――お父さん、もしかして泣いてるの? 裕子さんの問いかけに対して、最初は「久しぶりに声を聞いてうれし涙」といっていた斉藤さん。ただ、やはり様子がおかしいと感じた裕子さんが話を聞いていくと、斉藤さんから「今すぐ帰りたい。老人ホームを退去したい。しばらくおいてくれないか」と本心がポロリとこぼれたといいます。 ――なんでも、ホームには話し相手もいないというんです。本当に寂しかったんでしょうね と少々あきれ顔の裕子さん。斉藤さんいわく、入居者は元医師、元弁護士、元議員など、明らかに住んできた世界が違う人たち。話がなかなか合わず、段々と入居者と顔を合わせるのもツラくなり……最近はダイニングで食事を取ることもなく居室の備え付けのキッチンで自炊することが多いのだとか。 ――何のために、高い金を払っているのかわからない 自宅を売却したので戻るところもなく、裕子さんに泣きついてきたという顛末。仕方なく、裕子さん宅に転がり込んだ内藤さん。今度は身の丈にあったホームへの入居を目指し、裕子さんとも施設の見学に行っているといいます。 老人ホーム選びでは見学は必須。しかし入居者との相性までは見学では見極めが難しいところ。入居者について個人情報の観点から詳しくは教えてもらうことはできませんが、どのような"層”が多いかは聞いてみるといいかもしれません。 [参考資料] 内閣府『令和6年版 高齢社会白書』 株式会社NEXERとイオンのお葬式『終活の必要性に関するアンケート調査』