人気漫画『岸辺露伴は動かない』を分析したら、伝承文学のような緻密な物語構造だった!
以下の表に、不気味な事件が起こった舞台、作品中に登場する怪異体の種類と行為、怪異事象に対する露伴の行動についてまとめてみました。これらの要素はいずれも「モティーフ(*)」と呼ばれるものです。 (*)…編集部注:物語を構成する要素のうち、ストーリー(物語の内容)に影響を与える「記号的な意味」を持つものの総称 『岸辺露伴は動かない』シリーズにおいて、露伴はあくまでも怪異体に対する「直接的な敵対者」ではありません。収録5作品のいずれの話においても、露伴は怪異を取材する側の人、あるいは怪異に遭遇した人物の「付き添い人」という立ち位置です。 「動かない」というこの作品タイトルのとおり、作中で露伴は、自分に危険が迫るほど状況が悪化するまでは、「単なる怪異の目撃者」として振る舞い続ける……それがこのシリーズの特徴です。
● 幽霊、妖怪、山の神、海の神… 露伴が対峙する怪異体の連想性 第1話「懺悔室」は幽霊からの復讐が、第2話「六壁坂」では山に棲みつく人間型の妖怪からの襲撃が、第4話「密漁海岸」では神々の食べ物を窃盗した罰が、第5話の「岸辺露伴グッチへ行く」では血縁者から継承された「魔法のアイテム」による救済が描かれています。 そして、第3話「富豪村」は、運命を転換させる神々との遭遇がテーマになっています。その前に収録されている「六壁坂」とは「山に出現する怪異」という点で共通しており、後に続く「密漁海岸」とは「山の神」「海の神」の怒りという点で対比関係にあります。 他にもこの5話には共通する要素があり、その共通点によってエピソードがグループ化されています。これらの共通点はそれぞれの作品テーマと密接に関わり合います。そして、作品の個々のテーマは、次の作品グループに連想形式で継承されていき、二重、三重の伏線として効果的に使用されるのです。 共通要素による話のグループ化、連想テーマ、モティーフの対比に関わる、これらの構造を表にまとめてみましょう。