「”住み込みのメイド”がサラリーマンの家にーー」大正から昭和初期の女中という仕事
「話が違う」「うちに背負わせる魂胆か」 近年、大正時代を舞台にしたコンテンツが大きな広がりを見せている。漫画『鬼滅の刃』とそれを原作としたアニメをはじめ、漫画、文芸、音楽のジャンルにおいても、大正時代を舞台とした作品が増えているという。そんな大正時代の恋愛模様を描いた漫画『大正學生愛妻家』(粥川すず)が、SNSを中心に大きな話題を集めている。1話を発信したXの投稿は5.2万いいねを超え、単行本も発売即重版が決まるなど多くの反響を呼んでいる。 【画像】大正時代を舞台にした漫画『大正學生愛妻家』
「うちに背負わせる魂胆か」
大正10年ーー主人公のふきは、24歳の女中。東京市の由緒あるお屋敷で12歳の時から働いている。彼女は19歳の時に父親が借金を残して急死し、婚約が破談となっていた。 それ以来、借金返済のためにお屋敷で働いてきたふきだったが、ある日、北海道の本家に養子として出されていた"ぼっちゃん"と6年ぶりの再会を果たす。背丈も伸び、顔立ちも大人びた姿に、ふきをはじめとした屋敷の皆は驚きを隠せない。 「驚いちゃった。姿も声も別人みたいに変わってて」 「一緒にいた頃のことはもう、忘れちゃったのかな…」
「私の知ってる坊ちゃんじゃない」
最難関の「帝国第一高」に合格し、進学のために実家へと戻ってきたという勇吾は、卒業後には、北海道の本家が営む事業の後継者に指名されていた。そんなエリート街道を進む勇吾と、かつてお世話をしていた頃の可愛らしい"坊ちゃん"とのギャップに戸惑うふき。 一方、後継者として周囲の認知を得るため、義父から至急、結婚相手を見つけるように言われている勇吾は、ふきに対して思わぬ言葉を告げる。 「なぁ提案があるんだが」「――俺の妻になるか?」 こうして、借金を抱えながら生きる女中と、至急の結婚相手を見つけなければいけない学生の物語が動き出そうとしていた――。記事では、著者の粥川すずさんに主人公の職業である「女中」について聞いた。
サラリーマンも女中を雇う
――『大正學生愛妻家』の主人公は女中としてお屋敷で働いていますが、当時の女中さんとは、どういった存在だったのでしょうか。 現在のような便利な電化製品が何もなかった大正時代には、とにかく家事には人手が必要でした。今だったら、お手伝いさんがいるお家は、めちゃくちゃなお金持ちみたいな印象がありますよね。じつは当時は、そうでもなかったようで、都会の家庭だったら1人くらい女中さんを雇っていたそうです。 ――サラリーマン家庭にも、女中さんがいたということでしょうか。 そうですね。たとえば夫は普通の会社員で、妻は専業主婦、子供が1人か2人くらいいるようなありふれたご家庭でも、女中さんが住み込みで働いていたんだとか。当時の資料を見ると、モデルハウスには玄関の横に女中部屋が備え付けられていたり、職業として今よりも一般的だったことがわかります。