ビール原料ホップを安定供給へ 沼津で屋内栽培技術確立 CULTAがキリンHDと共同研究
沼津市に研究拠点を置く農業スタートアップのCULTA(カルタ、東京)はこのほど、ビール原料のホップの屋内栽培技術をキリンホールディングスと共同で確立した。屋外では夏季しかできないホップの収穫が年間を通じて可能になった。今後両社は品種改良に取り組む。通年で収穫と評価を繰り返し、現在は10年以上とされる品種改良を短期間で実現したい考え。急激な気候変動に対応しホップの安定生産につなげる。 栽培環境を制御できるAOI-PARC(アオイパーク、沼津市)の次世代栽培実験装置で、温度や光量などの条件を変えて栽培を試みた。カルタは栽培管理や育成データ取得、キリンが品質評価などを担い、安定的に栽培できる条件を導き出した。詳細は明らかにしていない。 マッチングイベントを通じてキリンからアプローチを受け、2023年8月からホップ生産の共同研究を進めた。キリンによると、ホップの屋内栽培技術の研究は国内唯一とみられる。屋内で収穫したホップは研究開発用で、現時点で商品に使う予定はないという。 ホップ栽培には冷涼な気候が適し、近年の温暖化や干ばつなどにより生産性が低下している。カルタの野秋収平CEO(31)=同市出身=は「世界中の人々が今と変わらずビールを楽しめるよう暑さや乾燥に強い品種を開発したい」と意欲を示す。 ゲノム(全遺伝情報)とAIなどを使い品種改良を高速化するノウハウを持つ同社は、世界各地の環境に適応した農産物の生産、販売を目指している。7月にはマレーシアでイチゴの生産を始めた。
静岡新聞社