「海の王者」モササウルス新種発見に沸く 和歌山、化石で町の活性化挑戦も
和歌山県有田川町で化石が発掘された海生爬虫類モササウルスの新種「ワカヤマソウリュウ」に注目が集まっている。復元された姿を一目見ようと、展示には県外からも古生物ファンが来訪。化石が発掘された町は外部人材を採用し、海の生態系のトップに君臨し、約6600万年前に絶滅した「海の王者」の人気を生かした町の活性化にも挑む。(共同通信=菅家光太) 7月中旬の有田川町。ワカヤマソウリュウの特徴や新種発見の意義を紹介する研究者の講演会には、200人以上が県内外から参加した。「何を食べていたのか」「卵から生まれるのか」など多くの質問も飛んだ。担当者は「町での講演にこんなにたくさんの人が来るのは異例だ」と驚きを隠さない。 化石は、アンモナイトを研究していた京都大の男子学生が同町で発見。和歌山県立自然博物館(海南市)は昨年12月、化石は推定全長約6メートルのモササウルスの新種であると発表した。ひれが従来より格段に大きいことから、前ひれで水をかいて泳いでいたとみられ、背びれがあった可能性もある。
博物館では9月1日まで、全身骨格の化石や頭部の立体復元が間近で見られる特別展示を開催。学芸員の小原正顕さん(51)は「全身の約7~8割が発見された化石はとても珍しく、世界中から注目されている。迫力を間近で感じてほしい」と話す。 ワカヤマソウリュウを「地域活性化への貴重な資源」と捉えた有田川町は6月、国の制度を活用し古生物学者の荻野慎諧さんを採用。化石を生かした町づくりに乗り出した。荻野さんは現在、町に移住し、地域の交流施設を拠点に全身の骨格模型を作っている。地元の子どもが模型を見ようと遊びに来ることも多い。 荻野さんはワカヤマソウリュウについて「ひれや目など、従来のモササウルスの定説を覆す特徴がある」と強調。「海の王者の真の姿を実感できる、日本を代表する化石となる」と期待する。今後は、観光、教育面で活用する考えだ。 ◎ ワカヤマソウリュウ 2006年に和歌山県有田川町で化石が発見された海生爬虫類モササウルスの新種の通称。学名は「大きい翼」を意味するギリシャ語などから「メガプテリギウス・ワカヤマエンシス」。発掘された地層から約7200万年前に生息していたとみられる。モササウルスは、映画「ジュラシック・ワールド」にも登場し、根強い人気を誇る。