「髪整えることで人生変わっていく」美容室苦手な発達障害児らに訪問カット 寄り添い、見守る
発達障害などで美容室が苦手な子どもたちや高齢者を対象に、大槻あゆさん(45) =京都府長岡京市=は、訪問美容「大福」を6月にスタートさせた。「清潔感のある身だしなみは人生を変える。子どもたちの自立のきっかけになればうれしい」と笑顔を見せる。 理美容師の両親に育てられ、子どもの頃から髪をきれいにする喜びを感じながら育った。大阪の美容室で勤務した後、両親が経営する京都府向日市上植野町の美容室「Joy Pure Associate」で美容師として働く。 高齢の顧客向けの訪問美容について勉強している時、感覚や聴覚の過敏で、髪を触られる感触やバリカンの音を嫌がり、美容室に来られない子どもがいると知った。生活するために必要な頭髪カットが子どもにもあると気づき、子どもの心に寄り添った「スマイルカット」をNPO法人「そらいろプロジェクト京都」(京都市)に学んだ。 目の前で髪を1本だけ切って見せる、カットクロスやバリカンを触ってもらう、頭髪カットの流れを絵で見せるといった工夫を凝らす。まずは慣れてもらおうとカットせずに帰ることもあるという。子どもが自分で電話をかけて予約し、美容室に出かけるまで、スモールステップで見守る。 大槻さんに出会うまで美容室に来られなかった子に2回目の頭髪カットをした際、「僕ってかっこいい?」と聞かれたことに感動した。「髪を整えることで、自信と意欲が生まれる。新しい経験ができ、人生が変わっていく」。その瞬間に立ち会い、可能性を実感した。一人一人違う不安をどう支えるか悩むこともあるが、「美容室にレジャーシートを敷き、遊び場みたいにしてみよう」などアイデアが浮かぶという。 介護職員初任者資格を持ち、福祉施設や高齢者宅などでの頭髪カットも行っている。「合理的配慮ができる美容師を増やしたい」と話す。