アゼルバイジャン航空の旅客機墜落、ロシアの責任追及する声高まる…旧ソ連圏での求心力低下か
カザフスタンで墜落したアゼルバイジャン航空の旅客機はロシア軍の防空ミサイルに被弾した可能性が濃厚となり、ロシアの責任を追及する声が高まっている。誤射と確定した場合、旧ソ連構成国に対するロシアの求心力が低下しそうだ。 【動画】カザフスタンで墜落した旅客機に多数の穴…アゼルバイジャン消息筋、「ロシアが撃墜した」(ロイター)
アゼルバイジャンの通信社トゥランによると、旅客機が露軍の防空ミサイル攻撃を受けたとする当局の予備調査の結果を受け、同国のラシム・ムサベコフ議員は「ロシアは謝罪すべきだ」と強調した。防空システムが稼働していたのであれば、民間機の立ち入り制限措置が必要だったと指摘し、「刑事責任を問わねばならない」と述べた。
露メディアによると、旅客機が墜落した25日朝、グローズヌイ付近などにウクライナ軍の無人機が飛来していた。露軍の防空システムが旅客機と無人機を誤認した可能性がある。
墜落で死亡した38人にはロシアのほか、アゼルバイジャンやカザフスタンの国民が含まれていた。いずれも旧ソ連構成国だ。露メディアは乗客の証言として、旅客機はグローズヌイで2回着陸を試みたが失敗し、3回目に後方で爆発音と振動があったと伝えた。
両政府は現時点でロシアの責任を追及していない。英BBCアゼルバイジャン語版は「両国は恐らく証拠を確保しているが、ロシアが責任を認めるのを待っている」とロシアの顔を立てているとの見方を示した。ロシアが対応を取らなければ、プーチン露政権と一定の距離を保つアゼルバイジャンでは非難が高まることも想定される。
ロシアは現時点で露軍の関与を認めていない。露航空当局は事故原因について、機体に鳥が衝突する「バードストライク」が発生したと発表した。プーチン露大統領は25日、旧ソ連構成国でつくる独立国家共同体(CIS)の非公式首脳会議で「死傷者とその家族に哀悼の意を表する」と述べたが、その後は発言が報じられていない。
露軍の攻撃を裏付ける決定的な証拠が出ない限り、ロシアは旧ソ連構成国を刺激しないように事態の沈静化を待つとみられる。
イスラエル紙エルサレム・ポストによると、旅客機墜落を受け、エルアル・イスラエル航空は26日、来週まで同国中部テルアビブ―モスクワ間の運航を休止すると発表した。