補正予算成立も少数与党の難路は続く 石破首相に残る「企業・団体献金」などの課題
少数与党に転落した石破茂内閣にとって、今国会の大きな関門の一つとされていた令和6年度補正予算が17日の参院本会議で成立した。使途公開が不要な「政策活動費」を全面廃止する政治資金規正法再改正案も衆院を通過し、首相は目の前の課題を着実にこなしていると見る向きもある。ただ議論を先送りした「企業・団体献金」の扱いや「年収103万円の壁」など与野党間で意見が対立する課題は残り、難しいかじ取りは当面続きそうだ。 【写真】親指、中指、人差し指、「Vサイン」も…答弁求め方も個性的な石破茂首相 「少数与党、そしてハングパーラメント(宙づり議会)の中で、本当にいい審議ができた。与野党の多くの協力をいただいて、かみあった議論になった」。首相は予算成立後、官邸で記者団にそう語った。 首相は今国会序盤、周囲に「少数与党なんだ。野党と敵対するような答弁をしてどうする」と語気を強めた。その言葉通り、首相は今国会の論戦では「丁寧さ」に腐心した。 もともと論戦力には定評があったものの、衆参両院の論戦を通じて野党に付け入る隙をほとんど与えなかった。首相がようやく自ら見せ場作りに成功した格好で、党中堅も「安定した答弁で野党は攻めあぐねていた」と評価。来年の参院選を見据え、政府高官は「年内に課題を一つ一つ解消し、年明け以降は政権カラーを出していく」との青写真を描く。 ただ、野党に主導権を握られ続ける少数与党の状況に変わりはない。補正予算は衆院での審議過程で立憲民主党に配慮して修正。政治改革では機密性が高い外交などのための「公開方法工夫支出」について、自民が野党の反発を受けて取り下げるなど、政策面で与党の主体性は示せていない。 一方、「企業・団体献金」の扱いについて、首相は周囲に「ここで引けば、自民が自民じゃなくなる」と語る。企業の政治活動の自由は確保されるべきとの最高裁判例などを理由に一歩も譲らぬ構えだ。だが、来年の通常国会では野党側の激しい反対にさらされることは必至で、議論の先行きは見通せない。(末崎慎太郎)