焼肉店の倒産が過去最多。牛角、焼肉きんぐ…「大手」が店舗拡大する一方で「個人店」は苦境
人件費の抑制にも限度がある
一般的に外食店は、FL(原価・人件費)コストの管理が重要で60%以内に抑制しないといけない。そもそも焼肉は、調理のメインである「焼く」をお客さんに任せることと、一品メニューを簡単メニューにすることで、職人の必要がなく、コックレスの仕組みを確立して人件費を抑制できる特性がある。 職人の高い給料が不必要な分を原価に充当しているから、焼肉食べ放題などは費用構造的に成り立っているものだ。しかし、アルバイトを中心に運営する外食店においても、そのアルバイトは完全な変動費ではないため、あまり削りすぎると定着せず、常に新人で運営すると大きなムダが発生する。 そのため、店への忠誠度を高めて運営力を強化させる人の管理が重要だ。「企業は人なり」はどんな業種業態でも共通した課題である。
絶対的なファンに支えられた個人店も
筆者がコンサルタントとして経営支援に携わっている「焼肉一盛」。元気な女性店主が、大阪の今里で「地域一番の焼肉店」を目指して頑張っている。来店客の7割は常連様であり、顧客基盤は盤石となっており業績は安定している。 また入れ替わりの激しい飲食店には珍しく、重要な人材の定着率も高い。そのおかげで熟練調理師による提供価値の高い商品、絶妙にマッチするタレ、フレンドリーな接客などで、満足度は高い。遠方からの来店が多いのが、その価値を物語っている。 以前、道路を挟んだ向かいに有名チェーン店がオープンし、脅威な存在に思われたが、あまり影響はなく、今はその有名店のほうが撤退した。
支持される個人店の強みは
焼肉一盛の強みは、①地域における看板力(ブランド力)と安定売上が持続的に維持できる盤石な顧客基盤。②高度な技術と韓国料理のノウハウを蓄積した熟練調理人による強固な商品開発力と提供力。③大胆な発想で進化を遂げる商品ラインナップ。④どの年代にも柔軟に対応できる高い接客と接遇技術などだ。 焼肉に精通し食べ歩きを趣味とするお客様が「これだけ高品質なお肉と美味しく内容が充実した一品料理を堪能できたのにこれだけ安いのには驚き」と高評価であるなど、商品力とお手頃価格で提供できる仕組みの確立が確立されている。 このように、普段から地道な努力を積み重ね、絶対的な顧客が存在する店は、市場が不況に陥っても強いようだ。 <TEXT/中村清志> 【中村清志】 飲食店支援専門の中小企業診断士・行政書士。自らも調理師免許を有し、過去には飲食店を経営。現在は中村コンサルタント事務所代表として後継者問題など、事業承継対策にも力を入れている。X(旧ツイッター):@kaisyasindan
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