焼肉店の倒産が過去最多。牛角、焼肉きんぐ…「大手」が店舗拡大する一方で「個人店」は苦境
時代の変化に対応してきた焼肉の歴史
焼肉は高いものというイメージが定着していたが、1990年代、焼肉のファミレス化が進展して拡大した。筆者もその頃、焼肉業界に属しており、現場と本部からその勢いを目の当たりにした。 焼肉は老若男女問わず人気で、ここ最近は元気な肉食シニアが増えており頼もしい限りである。贅沢な食事だった焼肉が1991年の牛肉の輸入自由化をきっかけに、安く食べられるようになった。今となっては当たり前にある焼肉食べ放題も、仕入れ原価が低くなったから可能になった商品であり、食べ放題文化を30年以上にわたり浸透させてきたのである。 2001年9月に発生した国内でのBSE問題、さらには2003年の米国産牛肉のBSE問題の表面化、2011年には5人が死亡した焼肉チェーンの集団食中毒事件で、定番である生レバーやユッケが販売禁止になり、お店で食べる魅力が欠けてしまった。 人気は根強くあり、徐々に復活はしてきたが、昔ほどに回復はしていない。そういった中、お客さんの知識が豊富になり、店を選択する目が厳しくなってきた。店の思惑通り、一方的に儲けられなくなり、品質と価格のリーズナブルさなどで競争力のない店は淘汰される結果になった。
大手焼肉チェーンは知恵を絞る
食べ放題を中心に多店舗展開する大手は、干ばつなど供給要因や為替要因から輸入肉(牛豚)の仕入れ額の上昇に頭を悩ませている。食べ放題を実施する店は輸入牛を使用するのが通常だ。以前は、牛肉だけの注文が集中すると原価的に厳しいから、豚肉にシフトさせるようメニューを工夫していたが、その豚肉さえも高騰中だ。 お店からすると麺飯類を食べて早くお腹を膨らましてほしいが、「それは別腹」「焼肉だから肉を食べねば」という客も多く、そう簡単に店の思惑通りにいかない。最近は、ご飯の仕入れ値も上がって深刻だ。肉類の高騰からしたら影響度は小さいかもしれないが、焼肉には白米がよく合うから店にしては困った問題だ。 ということで、大手焼肉チェーンの戦略は、肉以外の低原価の一品メニューも食べ放題にして魅力度を高めつつ、原価率の高い肉の追加量を抑え、原価を圧迫させずお腹を満たしてもらうというものである。お客さんも色々と食べられ、店側も原価低減に繋がる。双方が満足できる食べ放題だ。