焼肉店の倒産が過去最多。牛角、焼肉きんぐ…「大手」が店舗拡大する一方で「個人店」は苦境
ランチ営業せざるを得ない事情
しかし、今は少しでも資金繰りを楽にするためにランチ営業する店が増えている。確かに、①売上が向上する、②食材の有効活用ができる(ディナー時の余りや端材を有効活用して食材ロスが削減)、③ディナーへの広告宣伝費になる、④現金払いが多いので資金繰りが助かるなどのメリットはある。しかし、人材不足が深刻な中、ディナーだけで経営できたほうが楽なはずだ。 しかし、現実として焼肉店は平日と週末の繁閑差が激しく曜日指数にばらつきがある。平日は閑散としており、店の前を通行する客からすれば、「この店大丈夫か」「お客さんが回転しないから肉の鮮度が悪いのでは」という負のイメージを勝手に持たれてしまうのだ。 昔の焼肉店は生レバーやユッケもあり、客単価が面白いように上がった。特に見栄張りやその場の勢いで散財するお客はたくさんお金を使ってくれて、店は潤ったものだ。しかし今となっては、そういう景気のいい時が懐かしい。
コスト上昇に苦しむ焼肉店の動向
焼肉店は出店コストが高く、初期投資の高さが重荷だ。加えて、初期投資額だけでなく、落ち着きかけているが、円安の影響で米国や豪州産などの輸入牛肉・豚肉価格の高騰、電気・ガス代、人件費、物流費など運営コストの上昇も重なっている。 物価高騰による消費者の「値上げ疲れ」もあり、店側は価格弾力性を考えながら値上げのタイミングを検討している。こうした経営環境の悪化で、小規模な焼肉店などでは厳しい価格競争に耐え切れなくなっている。物価高での節約志向も重なり、外食に「特別感」を求める余裕がなく、その機会も減ってきている。 焼肉の市場規模は、店舗数2万2000店、年商約1兆2000億円(2020年、日本フードサービス協会)と推計されている。焼肉は昔から絶対的な存在感があり、ハレの場によく使われる。お祝いで連れて行って欲しい店ランキングでは常に上位だ。 コロナ禍での外出制限では、焼肉はテーブルごとに吸気ダクトが備えられた店内設備が「換気がいい=3密回避」とのイメージが定着して安心できる外食であると評価された。そこに、低迷していた居酒屋などからの業態転換も多く、今となっては店が増えすぎたことによる、オーバーストア状態も経営不振の原因である。これまでの食肉価格の高騰・競争激化・値上げが困難の三重苦で、焼肉店の経営環境は厳しさが続くとみられる。