事業承継で後継者が「親族」の場合、〈相続税〉〈贈与税〉の納税が必須だが…負担軽減のために、必ず知っておきたい〈生命保険〉の活用方法【CFPが解説】
事業承継において、株式会社の場合は、後継者に株式の全部、または大部分を引き継がせることになります。後継者が血縁者であっても、従業員等であっても、事業の引継ぎに伴う混乱やダメージを最大限抑え、スムーズに承継できるような対策が必要です。今回は、ファイナンシャルプランナーの中山国秀氏が、「生命保険」の活用方法について解説します。 【画像】「30年間、毎月1ドルずつ」積み立て投資をすると…
後継者が「親族=法定相続人」の場合に起こりうるトラブル
民法によれば、「法定相続人」は、下記のように定められています。 (1)配偶者+子 ……子が死亡の場合は孫、孫が死亡の場合はひ孫 (2)配偶者+両親 (3)配偶者+兄弟姉妹 ……兄弟姉妹が死亡の場合は甥・姪 では、先代であるご自身が、後継者の経済的負担を軽くするために生命保険を活用する場合、どのようにトラブルを解決することができるのでしょうか。 後継者が「血縁者=法定相続人」の場合、起こりうるトラブルは下記の4点です。 ■相続での株式承継を行う場合 ……相続税を納税する資金が必要 ■生前贈与での株式承継を行う場合 ……贈与税を納税する資金が必要 ■株式以外の相続財産が少ない場合 ……後継者が他の法定相続人から「相続分」または「遺留分」を主張され、「代償交付金」の支払いが発生する ■後継者の社会的信用がまだない(少ない)場合 ……運転資金の融資が難しくなるケースがある こちらを、生命保険を活用した場合には、それぞれ下記のように解決することが可能です。 (1)後継者のために必要な資金の準備 ……経営者個人が「生命保険」に加入する (2)株式(相続財産)の価値引き下げ ……「逓増定期保険」「長期平準定期保険」の活用で可能 (3)会社として後継者から自社株を買い取り資金を準備する ……「終身保険」「長期平準定期保険」(法人保険)の活用で可能 それぞれ、下記で詳しく確認していきましょう。
生命保険の個人加入…後継者のための資金を準備する
先代であるご自身が個人契約で生命保険に加入し、受取人を後継者にしておくことで、後継者個人のために必要な資金を準備することができます。 ただし、こちらは後継者が「配偶者・2親等内の血族」の場合です。配偶者or2親等内の血族~どちらもいない場合には、例外として「3親等内の血族」でも可能です。 配偶者or2親等内の血族の範囲は、下記図表をご参照ください。 とはいえ、両親や祖父母を後継者とすることはあまり考えにくいでしょう。後継者を血縁者にしたい場合、配偶者・子ども・孫・兄弟姉妹が対象になると認識いただければと思います。 子どもの配偶者(娘婿など・1親等の「姻族」)、兄弟姉妹の配偶者(2親等の「姻族」)、甥・姪(3親等の血族)を後継者としたいような場合、生命保険の受取人は2親等内の「血族」までですから、これらの人々は含まれません。 もし、養子をどうしても生命保険の受取人としたい場合には、養子縁組をして法定血族になってもらう必要があります。 生命保険金は、後継者だけが“独り占め”できる また、後継者が受け取る生命保険金は、民法上は相続財産に該当しません。つまり、他の法定相続人の法定相続分や遺留分の対象にならず、後継者だけが独り占めできるといえます。 さらに、生命保険金は相続税法上「みなし相続財産」として相続税の課税対象ですが、「500万円×法定相続人の人数」の額について控除が受けられ、その分は相続税がかかりません。 後継者が先代(あなた)から相続した株式について、他の法定相続人が法定相続分や遺留分を主張してきた場合、後継者は生命保険金を利用して「代償交付金」を支払うことが可能です。 このように、生命保険金は相続した株式にかかる相続税の納税資金としても、たいへん有効です。