事業承継で後継者が「親族」の場合、〈相続税〉〈贈与税〉の納税が必須だが…負担軽減のために、必ず知っておきたい〈生命保険〉の活用方法【CFPが解説】
「長期平準定期保険」…20年~30年後の事業承継対策に有効
「長期平準定期保険」…20年~30年後の事業承継対策に有効 「長期平準定期保険」は、保険期間が大変長く、そのあいだの死亡保険金額が変わらない(=平準である)定期保険のことをいいます。解約返戻金のピークは20~30年後と、かなり遅い時期に設定されています。 保険料は、逓増定期保険と同様、一定割合が損金に算入されます。 長期平準定期保険の利用条件とメリット・デメリットは下記のとおりです。 〈長期平準定期保険の利用条件〉 1.高額な保険料を支払える見通しが可能 2.引退時期が(=退職金を受け取る時期)が20~30年後と、大まかに定まっている 3.引退時期と解約返戻金の受取時期(ピーク期間)が大まかに同じタイミングになるように契約できる 〈メリット〉 ・20~30年かけて保険料の一定割合を損金に算入しながら退職金を準備できる ・保険料が高額となるため、利益圧縮の効果が大きい ・退職金支給時に大きな赤字を計上するリスクを減らすことが可能 〈デメリット〉 ・保険料が高額であるため、会社のキャッシュフローを圧迫するリスクが大きい ・解約返戻金の受け取りと退職金支給のタイミングがずれた場合、大幅な黒字を計上してしまう可能性がある 長期平準定期保険は、解約返戻金のピークが加入から20~30年後となり、かつ解約返戻金のピーク期間が長いことから、引退の年度を“ぴたり”と定める必要はなく、“おおよそ”で決めておけばいいのが特徴です。 型通りでは退職金の支給によって多額の損金が出てしまいますが、解約返戻金の受け取りにより益金を計上し、会社が大赤字になるのを避けることができます。 一方、逓増定期保険ほどではありませんが、長期平準定期保険も保険料は高額です。そのため、十分な資金がない場合、キャッシュフローを悪化させる可能性があります。
株式を相続させたい場合に活用できる「2つ」の保険
会社が後継者から自社株を買い取り、後継者が代金を受け取ることで、相続税の納税資金に充てることができるという方法です。この際、会社側が自社株を買い取る資金を準備するために、生命保険に法人契約で加入しておくという方法があります。 自身が死亡した場合に、死亡保険金を会社が受け取るようにしておくことで、後継者から自己株式を購入する資金に充てることが可能です。「終身保険」「長期平準定期保険」、2種類の生命保険を活用する方法が考えられます。 自社株式の購入資金として利用する場合、注目すべきは、自身(あなた)が死亡した場合に会社が受け取る「死亡保険金」です。 「終身保険」 「終身保険」は、文字通り一生涯の死亡保障が続く保険です。そのため、なにがあっても確実に会社が保険金を受け取れるようにしたいのであれば、終身保険の加入・保有が最善といえます。 終身保険の特徴は、掛け捨てでなく、解約返戻金が増え続け、貯蓄性が高い点にあります。ただし、保険料は比較的高額に設定されていることから、キャッシュフローが悪化するリスクが大きいともいえます。 また、保険料は全額資産に計上されます。そのため、保険料で利益を圧縮するようなことは一切できません。 「長期平準定期保険」 「長期平準定期保険」は、保険期間が大変長く、その間の死亡保険金額が変わりません。ただし、「定期保険」のため期間が限られ、最長でも100歳までとなっています。 したがって、自身(あなた)が保険期間終了以降も長生きした場合、会社は保険金を1円も受け取れないというリスクがあります。自己株式の買い取りのための資金を準備する手段としては、終身保険ほど確実ではないといえます。 ただし、保険料は終身保険と比べれば低額なので、キャッシュフローが悪化するリスクは比較的低いでしょう。 また、保険料は一定割合が損金に算入されるため、利益を圧縮することも可能です。 中山 国秀 生活設計本舗 秀ちゃん ファイナンシャルプランナー
中山 国秀