<かつて魔法少女と悪は敵対していた。>藤原ここあさんの未完の名作 アニメ化の挑戦 “胸がギュッとなる瞬間”を映像に
そうした特別なシーンでは、光の表現、線、色にもこだわった。
「現場では、『特殊実線』と呼んでいたんですけど、特別なシーンでは、他のカットと実線を変えるという取り組みをしていました。やはり、そのカットは線の数も増えるし、色も多くなるので、手間はすごくかかったと思います。ギャグシーンとの対比もあって、皆さんの印象に残るシーンにできたのかなと思っています」
さらに、特別なシーンでは、あえて劇伴を抑え、「白夜とミラの恥ずかしいやり取りをそばで目撃しているような感覚」を味わってほしいと考えた。
「第9回の白夜とミラがクリスマスの夜を一緒に過ごすエピソードで、二人が『ミラさん』『白夜さん』と呼び合うシーンがあったのですが、そこも劇伴を入れないことで、見ている人が否応なしにその場にいるような感覚になって、あの二人の恥ずかしいやり取りをそばで目撃して、『いたたまれない、いつ終わるのこれ?』みたいな感じになってほしいと思いました。あのエピソードは、打ち合わせの時も、カッティングの時も、いい大人が集まって『恥ずかしい……!』『よそでやれよ』と言いながらやっていたんです(笑)。恥ずかしいものを恥ずかしいまま見てもらえるように、劇伴を削ってもらいました」
◇変身シーンのこだわり 最終回は?
原作へのリスペクトを持って制作されたアニメ「まほあく」で、アニメならではのシーンとして描かれているのが、魔法少女の白夜と篝火花の変身シーンだ。原作では、変身シーンが描かれたイラストが少なく、わずかなヒントから、変身シーンを形作っていったという。
「ここあ先生が変身シーンをお描きになっている絵が1枚くらいしかなくて、そこから想像するしかなかったのですが、当時の先生の担当編集の方から、先生が変身シーンについて、『キューティーハニーのようなセクシーな感じよりは、セーラームーンのような可愛い系だよね』と語っていたというアドバイスをいただいたんです。私やほかのスタッフもセーラームーン世代で、あの変身シーンをすり込まれているところもあるので、セーラームーン先輩から血肉を分けてもらって、作っていきました」