古本の価値再生に挑戦! 神保町のシェア型書店「パサージュ・ソリダ」が作る、本好きの交差点
PASSAGE SOLIDA
世界一の本の街とも称される神保町で、シェア型書店「PASSAGE by ALL REVIEWS」の3号店「SOLIDA」が今年の3月に誕生した。地中海を彷彿とさせるインテリアデザインは、19世紀のフランス詩人・マラルメの代表作である『紺碧(こんぺき)』からインスピレーションを得た。1、2号店のクラシックなスタイルとは打って変わったモダンな空間では、古本や新書に限らず、あらゆる新しいジャンルの読書体験を提供している。 【画像を見る】店内の様子や実際の「痕跡本」。
シェア型書店が実現する、唯一無二の出合い
シェア型書店とは、本棚の一画を個人に貸し出し、棚主として自身がセレクトする本を自由に販売できる仕組みである。「連帯」の意を持つフランス語「SOLIDALITE(ソリダリテ)」を省略化したSOLIDAでは、約600弱の棚が並び、多種多様な棚主が“入居”をしている。芸人のピース・又吉を筆頭とする「第一芸人文芸部」の棚や、大学のゼミで制作したZINE、「軽出版」と言われる即興的でカジュアルな出版方式の本など、ここでしか生まれない出会いや体験がある。 その中でも特に注目したいのが「痕跡本」だ。痕跡本とは、前の持ち主の痕跡が残されている古本のことである。書き込みのある不良品として認識されることも多いが、痕跡本はあえてそれを付加価値として考えている。例えば、作家や評論家などの痕跡を追うことで、本を通じたコミュニケーションが生まれる。こうして、同じ本でも別の角度から楽しむことができ、クリエイティブなリサイクルを可能にすることから、痕跡自体に価値が付いてくる。
古本の売り上げを返還する、画期的な仕組みを可能に
今後特に力を入れたい取り組みとして、代表の由井緑郎は、古本が売れたら著者や出版社に還元できるシステムの構築を挙げてくれた。「日本では、中古本が売れたという追跡のデータがなかなか取れていない」と語る彼は、古本に新しい可能性を見出している。 「PASSAGE」の3店舗では、キャッシュレス払いに一元化することで、経理システムを完全に自動化している。そして、全ての本を単品管理することによって、売れた本を追跡できるようになった。この2つのことから、古本が売れたら、その著者と出版社に売り上げの数パーセントを還元するという画期的なシステムが実現可能になる。そうなれば、間違いなく古本界では大きな革命が起きるだろう。
アイデアを生み出す、「本好きの交差点」へ
開放的で心地が良い、既存の概念にとらわれない「SOLIDA」は、本の可能性を広げ、まるで宝探しのような体験を提供している。ふらっと人が集まり、コミュニケーションやアイデアが生まれる。そんな「本好きの交差点」を訪れ、刺激に満ちた出合いを楽しんでほしい。
文:Pen編集部 写真:河内 彩