最新の健康法に傾倒する子ども、我が子に食習慣を強制する親…愚かなのはだれ?
日々激変する世界のなかで、わたしたちは今、どう生きていくのか。どんな生き方がありうるのか。映画ライターの月永理絵さんが、映画のなかで生きる人々を通じて、さまざまに変化していくわたしたちの「生き方」を見つめていきます。 【画像】イエローの制服に身を包む子どもたち。異常な食事法に傾倒していく。 今回は、12月6日から全国公開される映画『クラブゼロ』に登場する子供の保護者たちに注目。 あらすじ オーストラリアのとある名門校に、栄養学を専門とするノヴァク先生が、「意識的な食事」と呼ばれる最新の健康法を教えに赴任してくる。自己の解放のため少食を呼びかけるノヴァク先生の授業は、一部の生徒たちをたちまち魅了する。だが、彼女の教えは次第にエスカレート。最初は先生を歓迎していた保護者たちは、子供たちの異変を前に、慌てはじめる。『リトル・ジョー』『ルルドの泉で』のジェシカ・ハウスナー監督がミア・ワシコウスカを主演に描く、ブラックユーモア満載の現代スリラー。
何を食べるか、食べないか…コミュニティで「食」を共有するとき、何が起きる?
何をどう食べるのか、あるいは何を食べないか。食習慣は人によって様々。なかでも食と家との関係は切り離せない。映画『クラブゼロ』を見ながら、改めてそう実感した。 「意識的な食事」と称して、ひたすら食事の量を減らしていくことを薦めるノヴァク先生と、彼女に心酔する高校生たちが巻き起こす騒動。いうまでもなく、これはブラックコメディだ。制服としてみな同じイエローのポロシャツやスウェットを着る高校生たちが、いわゆる「意識の高い」若者を戯画化した存在として描かれているのは一目瞭然。 環境のため、健康のため、精神的安定のためにと謳われれば、明らかに異常な教えでも受け入れてしまう。自分たちだけが真実を知っているのだと言われると、たやすく陰謀論にはまってしまう。そんな現代の若者たちを笑いものにし、子供の異変に気づけない大人たちの愚かさを風刺したのが『クラブゼロ』という映画だ、とひとまずは言えるだろう。 でも、そんなわかりやすい物語以上に私が気になったのは、食をめぐって行われるそれぞれの家族のやりとり。