三遊亭ごはんつぶは新作落語の世界を刺激する【令和7年巳年 落語界気鋭の二つ目】
【令和7年巳年 落語界気鋭の二つ目】 三遊亭ごはんつぶ イキのいい二つ目がひしめきあう落語界。なかでも飛びっきりの5人を演芸評論家の渡邉寧久氏が厳選。聞いて損なし! 見て感激!未来の大名人たちよ! 【写真】桂米朝師匠は上方落語の古典として演じられている演目の数多くを掘り起こした ◇ ◇ ◇ 新作派の若手として、作り手としての一方、仕掛け人としての顔を持つのが三遊亭ごはんつぶ(28)だ。2022年11月に二つ目に昇進し2年と少し。YouTubeを開設し、仲間と毎朝8時からツイキャスの生配信「ニッパチ!」で落語家の周辺で起きている日常のエピソードをネタとして届けるなど仕掛けは多彩で「この2年間で種はまききりました」とすがすがしく断言する。 師匠は三遊亭円丈(故人)の高弟・三遊亭天どん(52)。師匠が天どん、でもって弟子がごはんつぶ。いい具合に響き合った芸名だ。通常の入門は、師匠と面談をして何となく決まるが、この師弟の場合はかなり特殊な成り行きを経た。 「連絡先は教えないけど、3日後、新作落語を持ってきたら見るだけは見る」 そう師匠に言われ、3日後に約束の場所へ出向く。3日ごとにその繰り返しを約10回。やっと話を聞いてもらえる切符を手に入れたが「それでも入門を許すという感じじゃなかったですね」と振り返る。 以前、天どん師に「弟子には自分が身につけたことをショートカットして教える」と聞いた。自分と同じ修業ではなく、改良した修業を伝える合理性。古典落語や昔話にヒントを得た「粗忽戦隊ヌケテンジャー」や「つるのおっさん返し」、落語家としては珍しい余芸であるボイスパーカッションを取り込んだ「DJ寿限無」など、新作落語の世界を刺激し続けている。 (渡邉寧久/演芸評論家・エンタメライター)