もう「1000円の壁」は関係ない?1000円超えの「冷凍ラーメン」が爆売れしているワケ
冷凍ラーメンが一般化した2つの理由
1000円を超える冷凍ラーメンが一般化してきている要因として、2つが挙げられると考えます。 1つ目は、「冷凍食品はおいしい」という認識が広がってきていることです。かつては冷凍食品というと、味は劣るが、家事の手抜きができて便利という認識でした。それが冷凍食品メーカーの努力や冷凍技術の発達により味が向上し、コロナ禍での中食ブームによって一気に冷凍食品のおいしさが広がりました。 日本冷凍食品協会が行う「“冷凍食品の利用状況”実態調査」の結果を見ると、「普段冷凍食品を購入する際、どこに魅力を感じて購入しているか」という質問に対して、「おいしい」と回答した割合は、2009年は24.6%、2024年は53.4%と、15年間で倍以上に増えています。 そのため、1000円の冷凍ラーメン自販機に対しても、購入するまでのハードルが下がっていたと感じています。 2つ目は、購入層に女性が多いという点です。一般的なラーメン店では、利用するお客さんのうち女性客の割合は1~2割です。入るのに勇気がいる、急いで食べなければいけないと思い入店を躊躇する女性がまだまだ多い印象です。 一方で、「ヌードルツアーズ」の購入層は、4割が女性です。ラーメン店に一人では入りづらいという方や、自宅なら残したり家族とシェアできたりするからと二郎系ラーメンを購入する方、小さな子どもがいてラーメン店を利用しづらいファミリー層も多いです。
「1000円の壁」は本当に存在するのか?
自宅で本格的なラーメンを食べたいという消費者の需要に応えようとすると、出前サービスでは配送中に麺がのびてしまうため相性が悪い上に、配達料も合わせると価格が2000円近くになります。 また、冷凍ラーメンをオンラインで購入しようとすると、配送料がかかる上に家に届くまで数日かかってしまいます。そのため、自販機で1000円の冷凍ラーメンを買うことへの心理的障壁は低かったのでしょう。 このように1000円以上する冷凍ラーメンが消費者に受け入れられることが分かり、スーパーやデパートでも冷凍ラーメンが陳列されるようになりました。スーパーやデパートに並んでいるものは1500円を超えるようなものもあります。 このような比較的高めなものでも店頭に並ぶ理由は、冷凍ラーメンという市場に限ると、冷凍ラーメンを製造販売する企業が大手冷凍食品メーカー、もしくは当社のような冷凍ラーメン事業に新規参入した企業しかないこと。 そして、「手間要らず・手頃な価格で、納得できるおいしいラーメン」と「お店のスープを使った、お店そのままの味を楽しめるラーメン」に二極化していることも理由だと考えます。 老若男女に愛され、国民食ともいわれるラーメンですが、消費者は必ずしも「1000円の壁」を意識して購入しているとは思えません。当社で扱っている各ブランドのラーメンも、店舗で出している場合は1000円以上の価格帯が多いです。この物価高の影響もあり、「1000円の壁」という認識は、一般消費者から少しずつ変わってきているのではないでしょうか。 最後に、「ヌードルツアーズ」はコロナ禍の緊急事態宣言を受け、外食が難しくなった際に、ラーメン店の売上に貢献したいと、スープを買い取るかたちでスタートさせた事業です。 今後とも大好きなラーメン店へ、製麺や新たな事業を通して、貢献していきたいと思います。
丸山 晃司(丸山製麺 取締役)