「ポケットの中の爆弾」が一斉に大量爆発、イスラエルのハイテク攻撃か
<一触即発だったレバノンのヒズボラとイスラエルの戦闘が予想外の展開を迎えたのか>
9月17日、レバノンの過激派組織ヒズボラのメンバー数百人が所持していたポケベルが、レバノンやシリアの各地でほぼ同時に爆発した。ヒズボラ関係者によると、8歳の少女を含む少なくとも9人が死亡し、数千人が負傷した。 【動画】閲覧注意:「ポケットの中の爆弾」が一斉に爆発した瞬間 ヒズボラとレバノン政府は、大規模で高度な遠隔攻撃と見られるこの爆弾攻撃についてイスラエルを非難した。イスラエルはコメントを出していない。 イランの報道によれば、同時爆発による負傷者の中には、イランの駐レバノン大使も含まれていた。 匿名のヒズボラ関係者はロイター通信に対し、ポケベルの同時爆発は、ヒズボラがこれまでに受けた「最大のセキュリティ侵害」だったと語った。 ヒズボラは、レバノンで大きな影響力を持つ政党であり軍事組織で、しばしば自らを、イスラエルに対抗する主要勢力と位置づけている。 米国務省のマシュー・ミラー報道官は、米国は「この攻撃を事前に把握していなかった」し、関与もしていないと語った。「現在、情報を集めているところだ」 ■製造過程に侵入か 専門家によれば、ポケベルの爆発は長期にわたる綿密な計画を要する作戦で、おそらくサプライチェーンに潜入し、レバノンに届けられる前に爆発物を取り付けたのだろうという。 レバノンのフィラス・アビアド保健相は、カタールのアルジャジーラに対し、爆発によって、8歳の少女を含む少なくとも9人が死亡、約2750人が負傷した(うち200人が重傷)と述べた。ほとんどが顔、手、ポケベルを入れるポケットがある腹部の負傷だった。戦闘員や衛生兵も負傷した。 レバノンのベイルート南部はパニック状態で、複数の救急車が走り回っていた、とロイターは報じた。目撃者によると、爆発は30分間ほど続いたという。 軍事アナリストのイライジャ・マニエはアルジャジーラに対し、ヒズボラは、イスラエルによる追跡を防ぐために携帯電話ではなくポケベルを多用してきたと語った。そのポケベルが、配布される前に細工されていたのだろう、とマニエも推測する。 「これらの爆発は......ヒズボラに心理的打撃を与えるのに十分な威力がある」とマニエは言う。 イランの強力な軍事組織、革命防衛隊に近いファルス通信は、テレグラムチャンネルでイランの在レバノン大使モジタバ・アマニが浅い傷を負ったと伝えた。 ヒズボラ関係者は、爆発は「ポケベルをターゲットにしたセキュリティー攻撃」の結果だと述べた。「背後には敵(イスラエル)がいる」 この関係者によれば、爆発したのは、ヒズボラのメンバーが持っていた新しいポケベルのリチウム電池だったという。 ソーシャルメディアや地元メディアに掲載された写真や動画には、ベイルート南部の郊外で、手やズボンのポケット付近に傷を負って歩道に倒れている人々が写っていた。 ヒズボラの戦闘員たちは、指導者ハサン・ナスララからの指示を受け、携帯電話の代わりにポケベルを使っていた。イスラエルがヒズボラ戦闘員たちの動きを追跡し、標的攻撃を行う可能性があるためだった。 この攻撃は、パレスチナ自治区ガザを実効支配するハマスの最高指導者ヤヒヤ・シンワルが、イスラエルとの戦争におけるナスララの支援に謝意を表した数日後に起こった。またハマスに援助を提供してきた諸派の「祝福された行為」について、後ろ盾のイランにも謝意を示した。 ヒズボラとイランは、何年も前から、ハマスに資金援助と軍事支援を提供してきた。ヒズボラはハマスのイスラエル攻撃以降、ハマスに加勢してレバノン・イスラエル国境沿いのイスラエル軍拠点を攻撃。イスラエルも報復攻撃を行なってきた。 その結果、レバノンでは500人以上が死亡したと報告されている。その多くはヒズボラの戦闘員だが、民間人も100人以上含まれている。 イスラエル北部では、ヒズボラの攻撃により兵士23人、民間人26人が死亡した。 (翻訳:ガリレオ)
リリス・フォスターコリンズ