「石破首相は中国に厳しいか」…「関税男」トランプ次期政権、対中強硬エスカレートで貿易戦争は必至
トランプ復権<3>
米国のトランプ次期大統領は、「タリフマン(関税男)」を自称する。2017~21年の第1次政権では、関税を武器に各国との貿易交渉で「ディール(取引)」を迫った。特に狙い撃ちにしたのが中国だ。その姿勢は、大統領選で一段とエスカレートした。 【地図】一目でわかる…全米の開票結果
「中国に60%の関税をかける」
第1次政権では、知的財産権の侵害を理由に3700億ドル(約55兆円)相当の中国製品に最大25%の関税を課した。選挙集会では、それをはるかに上回る関税を一律に課すと繰り返しアピールした。安価な中国製品の流入で米国の雇用が失われたと不満を抱く白人労働者層に響くと見定めたからだ。
大統領選の公約にあたる共和党綱領には、中国に対し、関税などで他国と同じ貿易条件を保障する「最恵国待遇」を撤廃すると盛り込まれた。これらの政策が実行されれば、「第2次貿易戦争」の勃発は必至だ。
トランプ氏の外交・安全保障や通商分野のブレーンには、対中強硬派がずらりと並ぶ。その筆頭格は、通商代表部(USTR)代表への再起用などが取り沙汰されるロバート・ライトハイザー氏だ。第1次政権で貿易戦争の陣頭に立った。
「石破首相は中国に厳しいのか」
ライトハイザー氏は9月下旬、旧知の外交関係者にこう尋ねた。トランプ氏の復権を見据え、日本が足並みをそろえて中国に強硬な態度をとるのかどうか探る狙いがあった。
次期政権の布陣は対中シフトになる公算が大きい。国務長官候補には、親台派のマルコ・ルビオ上院議員らの名前が挙がる。
もっとも、トランプ氏が重きを置くのはあくまでも貿易面での損得勘定だ。貿易交渉で譲歩を引き出せるのであれば、中国が統一をもくろむ台湾ですらディールの材料になるとの懸念がくすぶる。過去には、「台湾は米国の半導体事業を盗んだ」「米国は保険会社のようなものだ。台湾は我々に防衛費を払うべきだ」と発言したこともある。
トランプ氏は10月、中国が武力統一を試みた場合の対応を問われると、「関税を150~200%に引き上げる」と答えた。だが、米軍の介入に関しては一貫して回答を避けており、バイデン大統領が軍事介入を何度も明言したのとは対照的だ。民主主義陣営の台湾を守るという決意はうかがえない。