「きょうはトシのパスで決める」佐藤寿人が熱く語る最高の相棒・青山敏弘との“伝説のゴール”…「トシのボールにはメッセージがあるんです」
稀代の名パッサー、青山敏弘。2024年限りで引退を決めた彼に、Number1111号では特別インタビューを行った。そこで青山が回想した「最高のパス」。今度は、その受け手だった佐藤寿人に、青山への思いを聞いた――。〈NumberWebインタビュー全2回の1回目/つづきはこちら〉 【写真】「見ていると泣けて仕方ない」若き日の青山と佐藤の笑顔、勝利を抱き合い喜ぶ姿、そして引退セレモニーでの止まらぬ涙まですべて見る これ以上ないパスと、これ以上ないシュート。 パッサーとストライカーどちらかが一瞬でもタイミングが遅れたら、一瞬でもお互いを感じ取れなかったら、きっと成立しなかった伝説のゴールがある。
青山敏弘の「自分を超えていったパス」
サンフレッチェ広島、21年間ひと筋の“ワンクラブマン”青山敏弘が2024年シーズン限りで引退するにあたり、インタビューを実施した。そのなかで「自分を超えていったパス」と表現したのが、2012年11月7日、ホームでの北海道コンサドーレ札幌戦でエースの佐藤寿人に届けたロングパス。 ワンタッチで決めた佐藤にとっても4歳年下の青山とのホットラインで「一番強く印象に残っているシーン」だと言う。彼の目線で振り返ってもらった。
佐藤寿人は「きょうはトシのパスで決める」と言った
就任1年目の森保一監督率いるサンフレッチェはリーグ初優勝の重圧にさらされていた。首位を走りながら10月に入って2分け1敗と足踏みし、勝ち点も2位ベガルタ仙台に並ばれた。ホームの広島ビッグアーチに戻り、前半17分に佐藤が奪ったPKを森﨑浩司が決めて先制しながらも、全体的に動きの硬さが取れたわけではなかった。 試合前、ここ3試合ゴールのない佐藤は青山に「きょうはトシのパスからゴールを決めるから」と伝えていたという。 何か予感があったということではなかった。 「決めたい、っていうゴールに対する欲ですよね。そんなこと大事なときにしか言わないです。直接は言わなくても、要は“いつも以上にトライしてくれよ”ってこと。トシからは『そんな簡単にはいかないでしょう』と返されましたけど、すんごいパスが来たんですよ」 それは前半31分だった。ハーフウェーライン手前でパスを受けた青山は、中央やや右寄りからペナルティーエリア内左に入っていく佐藤に向かってボールを蹴り出す。バックスピンが掛かり、佐藤のシュートポイントに合わせ、追いかけてきたディフェンダーはギリギリ間に合わない。佐藤はそのバウンドに合わせて左足を振り抜き、逆サイドに叩き込んだ。
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