たかが5万円、されど5万円…新型コロナ禍で試合が延期、ファイトマネーもバイトもなくなった所属全プロボクサーに大阪名門グリーンツダジムが生活補償金を支給
実は、WBA世界ミドル級王者、村田諒太が所属する帝拳ジムも、活動休止を決定後、所属選手に10万円を見舞い金として支給していた。 「選手ファースト」の帝拳らしい支援だが、ほとんどのジムは、退会する会員が後を絶たずに経営は、火の車。ジムの存続が危ぶまれる状況にあって選手の補填まで手が回っていないのが実情だ。 選手救済に動くとすれば、政府、自治体、そしてジムに補償金を支給したJPBAしかない。この日、オンラインでJBCとJPBAの新型コロナ対策連絡協議会が開かれ、6月末までの興行中止が決まり、延期されている新人王戦の開催の是非などが検討されたが、選手の救済案も協議された。 JBC主導で選手にアンケートなどのヒアリングを実施。健康状態に加え、将来に対しての不安など情報を収集して救済措置の施策につなげたいという。JBCの安河内剛・事務局長も、「選手の声を拾い上げていくという作業をしたうえで、救済方法をいろいろ協会と話し合っていきたい」と話した。今後は、なんらかの方策を練って選手の支援金を捻出したいというプランもある。 オンラインでの連絡協議会に参加していた本石会長は、「まず自分の行動で示したかった」と、この日の連絡会議では、あえて選手への救済案を提案しなかった。 そして、政府、自治体へ、こう訴える。 「ボクシングには、人を楽しませ、感動させるという、エンターテイメントな要素があります。政府や自治体の支援策が、今は、そこまで手が回らないのが現実でしょうが、ボクサーは、そのために体を張っています。世の中にスポーツは必要なものです。アスリート支援というものをぜひ考えていただきたい」 これが切実な声だ。 伝統の新人王戦でさえ、出場人数次第では、中止に追い込まれる可能性もあり、興行再開の見通しはまったく立っていないが、本石会長は希望を捨てていない。 「新型コロナが収束に向かい、自粛要請が解かれれば、絶対に経済は回復すると思います。“またボクシングを見たいな“という風も吹くと思うんです。いい意味での反動ですね。今は、それを信じています。だから、今は選手、スタッフを守ることなんです」 本石会長は、今後の状況次第では、選手への5万円支給の第二弾も考えているという。 ボクシング界最大の危機を乗り越えるのは、殴られても殴られても、新型コロナウイルスをノックアウトしてやろうとあきらめないボクシングの強い意志なのだろう。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)