スイス高級時計市場、世界的な低迷脱せず 買い手市場はいつまで続くのか?
スイスの高級時計市場の低迷が続いている。スイス時計産業連盟の報告書によると、8月の同国の時計輸出は120万個で、昨年同月より12万5000個少なかった。数量が減少した一方で、輸出総額は7.8%増加して18億スイスフラン(約3200億円)となったが、これは貴金属腕時計の価格上昇によるものだった。市場の最大部分を占めるステンレススチール時計は金額で7%減少し、数量では10.5%の減少となった。最も苦戦したのは低・中価格帯の時計市場だ。輸出価格が3000スイスフラン(約53万円)未満の時計は金額で14%、数量で11%減少した。 中国(5.9%減)と香港(11.1%減)向けの時計輸出は8月も減少したが、前月ほどの減少幅ではなかった。報告書は、中国・香港市場は向こう数カ月間も引き続き極めて悲観的な見通しだと指摘。中期的な展望が不透明であることから、時計メーカーは今後さらに慎重になり、場合によっては製造を削減する動きもあると説明した。 過剰生産は業界にとって深刻な問題となっている。インターナショナル・ウォッチ・カンパニー(IWC)やカルティエ、ヴァシュロン・コンスタンタンなどの人気時計ブランドを展開するスイスの高級ブランド大手リシュモンのヨハン・ルパート会長は、9月11日に開催された年次総会で、世界的な需要に対する懸念を表明した。同会長は「時計に対する世界の需要はピークを過ぎた」との見方を示し、高級時計メーカーに生産を削減するよう呼び掛け、増産については慎重になるよう促している。 この悲観的な演説とは裏腹に、最新の輸出統計には明るい兆しもあった。中国と香港以外では、高級時計の需要は改善しつつあるようだ。特に増加が著しかったのは、アラブ首長国連邦(26.9%増)、イタリア(17.6%増)、日本(14.4%増)、韓国(14.2%増)、シンガポール(9.3%増)、米国(7.6%増)だった。