滞るウクライナ支援、「もしトラ」になれば米国は本当にウクライナを見放すのか
(国際ジャーナリスト・木村正人) ■ 米下院議長、トランプに歩み寄る [ロンドン発]ドナルド・トランプ前大統領に近いマイク・ジョンソン米下院議長は、ウクライナ・イスラエル・台湾追加支援について20日夕に下院で採決。 【写真】2023年11月開催のミス・ユニバースに参加したミス・ウクライナのアンジェリーナ・ウサノバさん 上院が2カ月前に可決した950億ドルの追加支援案とほぼ同じ内容だが、4つに分割し、個別に採決した結果、超党派の圧倒的な支持を集めて承認された。23日再び上院に戻され、成立する見通しだ。 議長案はウクライナへの610億ドル(3分の1超は米軍向け武器弾薬の補充)、イスラエルとガザへの260億ドル、台湾を含むインド太平洋地域への80億ドルからなる。ジョンソン議長は17日、米Foxニュースに「われわれは世界の警察官ではないが、正しいことをするつもりだ」と述べていた。 ウクライナへの資金援助を批判する強硬な共和党右派や、イスラエル支援を支持しない民主党左派の反対を押し切るため、4つの法案に分割して下院で採決。最大の懸案だったウクライナ追加支援も311票対112票で承認された。1つの法案にまとめられて上院に戻される。 ウクライナへの95億ドルの経済支援について、議長案は返済の必要が全くなかった上院案と異なり、一定の条件が満たされれば返済しなくていい融資に変更した。共和党大統領候補ドナルド・トランプ前大統領に歩み寄った形で、多くの共和党議員が支持に回った。
■ 米極右議員「戦争に資金を提供するなら従軍しろ」 議長案は11月の米大統領選で再選を目指すジョー・バイデン大統領がウクライナで何を達成しようとしているのか、その計画と戦略を米議会に提出するという要件も含まれている。計画は追加支援案が成立してから45日以内に議会に提出しなければならない。 反ユダヤ主義、白人至上主義、陰謀論をまき散らし、熱烈なトランプ支持者である共和党の極右マージョリー・テイラー・グリーン下院議員は賛成票を投じた議員に「戦争に資金を提供したいなら、なぜ戦争に参加しないのか」とウクライナ軍への徴兵を義務付ける修正案を提出、議員は宇宙レーザー技術のメキシコ国境への配備も求めたが、賛同は得られなかった。 イランによるイスラエル攻撃で緊張が高まる中、ジョンソン議長は民主党票を取り込んで過半数を目指す。強硬採決が裏目に出れば、議長はもちろんウクライナは瀬戸際に追い込まれる。まさに剣ヶ峰だった。 トランプ大統領返り咲きの可能性が強まるにつれ、欧州はガードを固めている。チェコのペトル・フィアラ首相は英紙フィナンシャル・タイムズ(FT、15日)に「現時点で欧州諸国が他国から追加の砲弾を購入することがウクライナに迅速に弾薬を提供する唯一の方法」と寄稿した。