ヴァレンティノのアレッサンドロ・ミケーレ、予定より3カ月早くデビューコレクションを発表
6月17日(現地時間)、伊ミラノ・ファッションウィークで、ヴァレンティノの新クリエイティブ・ディレクター、アレッサンドロ・ミケーレがデビューコレクションをサプライズ発表した。 【写真85枚】ヴァレンティノ2025年プレ・スプリングのメンズルックを全て見る 6月17日の朝(現地時間)まで、この夏のミラノ・ファッションウィークはほぼシナリオ通りに進行していた。そして突然、ファッションウィーク最終日にサプライズは起きた。ヴァレンティノのクリエイティブ・ディレクターに就任してわずか2カ月、アレッサンドロ・ミケーレが突如デビューコレクションを発表したのだ。 グッチのデザイナーを退任して1年あまり、彼はいったい何をしているのだろうと思っていた矢先に、その答えは明らかとなった。2025年プレ・スプリングのルックブックにはメンズ・ウィメンズ合わせて171ものルック、さらにバッグ、シューズ、ジュエリーの画像が93点フィーチャーされている。 ■ミケーレ流ヴァレンティノ 「Avant les Débuts(デビューに先駆けて)」と名付けられたこのルックブックは、ミケーレがグッチで中断した仕事をそのまま引き継いだようなものとなっており、ヴィクトリア調の豪華さとパンクでジェンダーフルイドなアティチュードを融合させた、彼の精巧でアーティスティックなビジョンがファッションの一時代を築いたということを思い出させてくれる。 ルックに次ぐルックで、ヴァレンティノでの彼の序章は、ミケーレの名を轟かせたプレイフルかつ装飾的なデザインの数々を明確に踏襲している。チェック柄のロックスター風スーツにはシルクのリボン、スエードのフリンジ付きバッグ。金色のモヘアロングカーディガンにビッグなTシャツ、ダッドジーンズ、レザーローファー。ハリー・スタイルズにぴったりなニットベストや、ジャレッド・レトが着ている姿がにわかに想像されるニットチュニックなど、ふたりのミケーレ信奉者もたちまち新生ヴァレンティノの虜となることだろう。 『VOGUE RUNWAY』のティツィアーナ・カルディーニのインタビューに応じたミケーレは、9月のパリ・ファッションウィークでの公式デビューまで待てなかった理由を、ヴァレンティノでの新たなポジションに対する情熱からと説明した。 「私はヴァレンティノでの仕事を、まるでオーケストラを指揮するように取りかかり始めました。皆が愛と献身をもって楽器を演奏してくれますから、そのためにたゆまぬ努力をしてくれている人たちに感謝とねぎらいの気持ちを持つのが正しいと思いました」と、ミケーレは言う。「私の仕事は楽器の音を調和させることです。また、重要なのは全てを分かち合うことですから、コレクションを人目から隠しておくことが正しいことだとは思えませんでした。これは愛から生まれた始まりです。このコレクションは日の目を見たい、見てもらいたい、分かち合ってもらいたいのです」 これらのプレシーズン・アイテムは、おそらく年末にかけて店頭に並び始めるだろう。 ■古巣グッチとは好対照 急遽発表されたリリースのタイミングは、ある特定の人物に当てつけられたものにも思える。この日は、グッチを退いたミケーレの後任で、かつヴァレンティノではかつてプレタポルテの責任者を務めていたサバト・デ・サルノによる2度目のメンズウェアショーが控えていた日だ。 この2つのメゾンの間には、本質的に大きな美意識の逆転があった。デ・サルノによるグッチの最初のメンズコレクションは、シックなデイリーウェアが集う実用的なワードローブという方向性を明確にしていたのに対し、ミケーレはロココ調の雰囲気やグッチでの仕事を即座に思い起こさせる、彼のレトロで映画的なデザインシグネチャーにさらに磨きを掛けている。 ミケーレの戦略は、今回のミラノ・ファッションウィークで展開されたより広範なテーマにも合致している。それは、デザイナーがリスクを冒す代わりに、自分たちの強みを発揮することに集中する、という流れである。『The Business of Fashion』の取材にミケーレは、ヴァレンティノのアトリエで思いのままに使えるリソースを使い、自身の作品を新たな次元へと押し進めていくと、彼らしい際どい表現でほのめかした。 「(ヴァレンティノには)企業で初めて目にするレベルの職人技があります。不可能を可能にできるんです。私のような人間にとって、それは絶え間ないオーガズムのようなもの。絶頂ですよ」 From GQ.COM by Samuel Hine Translated and Adapted by Yuzuru Todayama