目撃件数が倍増「熊を正しく知り、正しく恐れるために」 人とすみ分けが重要、生態を知って被害防ぐ絵本
NPO法人「信州ツキノワグマ研究会」(長野県松本市)が、子どもたちに熊の生態などを知ってもらおうと初めて学習絵本を作った。熊について正しく知り、熊による被害を防ぐきっかけにしてもらう狙い。800部作成し、県内の全小学校などに配る予定だ。同会理事で事務局長の浜口あかりさん(40)は絵本を通じ「むやみに恐れず、熊の生態を正しく知り、正しく恐れるようになってほしい」と話している。 【写真】母熊と別れた子熊が木の上から人里を眺める場面
人里周辺に生息する1頭の雌の熊を中心とした物語。餌となる食べ物やすむ場所を説明し、子を産み育てる様子を描く。各ページには熊が冬眠する理由などのコラムも掲載。子どもにも分かりやすい内容に仕上げた。物語は同会が構成し、絵はイラストレーターの柏木牧子さんが担当した。A4判、33ページ。
同会では熊の生態をまとめた教材を使い、啓発活動を行っている。2022年に子どもにもイメージしてもらえるよう紙芝居を作り、小学校での出前授業などに用いてきた。今回、子どもたちがいつでも学習できるよう、紙芝居を基に絵本にした。
近年、里地での熊の目撃が増加。県森林づくり推進課によると、23年度は県内でツキノワグマが1406件目撃され、前年度の770件からほぼ倍増。人身被害も11件あった。本年度も4月末時点で20件の目撃情報がある。
浜口さんは、人と熊の生活圏が近くなっていることが、熊の目撃が増えた要因だと指摘。里山を管理する人が減って草木が生い茂るようになり、熊が身を隠せる場所になって意図せず人里に近づいてしまうという。浜口さんは「熊と人の生活圏をいかにすみ分けられるかが重要だ」としている。