FRB利下げスルーした米債券トレーダー、トランプ政権見据える
(ブルームバーグ): 7日の米債券市場では、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の言動が米国債相場を再び押し上げると期待していたトレーダーの間で失望感が広がった。米金融当局は予想通り利下げを実施したが、今後の道筋にほとんど言及しなかった。
ドナルド・トランプ氏の大統領選勝利を受け6日に売り込まれた米国債は翌7日、小幅な相場反発にとどまった。失業保険申請件数のデータが労働市場の幾分の軟化を示し、利回りが低下した。
ただこれを新たな利回り低下トレンド入りとみる人はほぼ皆無だった。トランプ氏は就任後、関税引き上げや減税、規制緩和を推進すると予想されているためだ。これらはいずれも、既に堅調な経済を後押ししインフレを加速させる可能性がある。財政赤字を膨らませ、際限なく発行されるように見受けられる米国債の市場吸収能力が試されるのは確実だろう。
パウエル議長はトランプ氏の計画が見通しにどう影響する可能性があるかについて言及を避けたが、連邦政府の財政政策は「持続不可能な道筋」にあると述べた。また、12月の次回連邦公開市場委員会(FOMC)会合についても明確な情報をほとんど提供しなかった。スワップ市場では12月の追加利下げ確率は約70%と想定されている。
7日の米10年債利回りは約11ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下して4.33%。6日に2020年3月以来の大幅な相場下落を記録した30年債は、その下げ幅を幾分縮小しただけだった。
LPLファイナンシャルのチーフ債券ストラテジスト、ローレンス・ギラム氏は「FOMC声明やパウエル議長発言が、最近行われた債券市場の想定見直しに反する内容だったとは思わない」と指摘。
「議長は、データが予想よりも堅調なら12月会合でスキップ(1回見送り)もあり得ると示唆したと解釈できる余地を十分に残した」とし、「当面はこの利回り水準で推移するだろう」との見方を示した。